第3話  AIに囲まれた世界〜いよいよ、動き出した!

レンタル雇用推進法案が改正され、厚生省にAI管理センター人材レンタル部門が発足された。

これまでは、マイナンバーによりAIにより管理されて、裏ルートで対応していたが…本格的に動いている事がマスメディアに取り上げられ、国民の関心を集めていた。

又、過剰な母子家庭のバッシングが始まった。

『あそこは、母子家庭よぉ。父親がいないのよぉ。』

『あらぁ、大変。あんな家庭は見ちゃだめよぉ。馬鹿になるわぁ。いやだぁ、同じ服よぉ。』

『本当ねぇ?嫌だわぁ…毎日、働いているけど…休みは子供と一緒にいないとねぇ?可哀想…あぁ…嫌だわぁ…。母親の満足で離婚して、子供の事は何にも考えていないわよねぇ?』

『でも、ご主人の浮気やDVなどが原因だったりするんじゃない?』

『まぁ、それもあるけど…お互いが好きになって、未来を予想出来なかった結果でしょ?お互い様じゃない?』

『確かにねぇ?でも、男が中に出したのが一番悪くない?』

『そうねぇ…一番悪いのは男ねぇ?でも、愛しあったからこその結果ともいえるわねぇ?しかし、母子家庭を決断したのは、母親でしょ?違うのぉ?』

『確かにねぇ?最終的には生活出来ないのに、お腹を痛めて産んだという母親のエゴねぇ?』

『子供が可哀想ねぇ?』

『そうよぉ!最終的には母親のエゴよぉ。罪作りねぇ?』

『本当に母親のエゴで子供が犠牲になるのよぉ!それに、好きな人が出来た途端に、母親の虐待が始まるのよぉ。』

『確かにねぇ?子供の虐待で一番多いのは実母なのよぉ?』

『えぇ…そうなんだぁ…。継母ではないのぉ?』

『違うわよぉ。子供の虐待の6割が実母よぉ。』

『そうなんだぁ…最悪ねぇ?』

『でしょ?現実は苦しいのよぉ。』

『あぁ…そうそう、今回、雇用推進法AI管理センターレンタル人材部門が母子家庭の撲滅を始めるみたいよぉ。まぁ、母子家庭の半分以上が年収が200万以下ならやむを得ないわねぇ。ダブルワークも頭がおかしいから良いじゃない。本当ねぇ?あぁ…でも、母子家庭の撲滅とはいえ、年収が400万以上は対象外みたいよぉ。それに、独身男性のレンタルもはじまるみたいよぉ。誰を選ぼうかしら…私の方は、既に愛が冷めてるから、お互いに好きなようにさせてもらうわぁ。』

『あらぁ、うらやましいこと。私の方は、相変わらず仲が良いから大丈夫よぉ。』

『本当かしら?でも、独身男性のレンタルを一度は楽しみたいじゃない?』

『そうかも知れないけど…』


『あらぁ、始まったわぁ。』

『恐れ入ります。中野さん、 私、厚生省のレンタル雇用推進部AI管理センター地域福祉包括支援センターから参りました。この地域を担当しております、社会福祉士の米山 幸治(48)になります。お母さん(中野 美香さん)(38)はいらっしゃいますか?』

『お母さんは今、お仕事に行ってます。』

『あぁ…そうですか?少し、お話を伺ってもよろしいですか?』

『はい、大丈夫です。君は?』

『私は娘の中野 百合(15)です。』

『実は、今回来たのは、家庭環境の確認です。お母さんとは一緒にいる時間はありますか?』

『そうだなぁ…1時間程かなぁ。たいていは、すれ違いだなぁ…。夜勤をしているから、16時から仕事に行って、10時頃帰ってくるなぁ…。だから、学校に帰って来たら色々と話したいけど…出来ないなぁ…。』

『なるほどねぇ?それでは、たいていは、1人でご飯を食べているのかなぁ?』

『1人では食べてはいないよぉ。子供食堂でみんなで食べているよぉ。学校が終わったら、放課後学級で勉強したり、遊んだりしているよぉ。』

『でも、本当は母親と一緒にいたいのでは?』

『もちろん、一緒にいたいよぉ。高校受験だけど…進路の事で話しがしたいけど話せないし…お金もないから…悩んでいるけど…』

『なるほどねぇ?進路の事で悩んでいるんだねぇ?』

『そりゃそうだけど…私に逢っても、『あぁ…忙しい。』って言うだけで…お金だけ置いて直ぐに仕事に行きます。』

『もしも、新しいお母さんが出来て、お父さんもいる家庭で幸せに暮らせたらうれしいよねぇ?』

『そうだなぁ…。母親とは幼い頃から一緒にいた事がないし、父親とはあった事がないから…幸せだろうなぁ…。』

『なら、もしも、それが出来たらうれしくないかい?』

『そりゃ、出来たらうれしいよぉ。父親や母親と一緒に旅行に行ったり、勉強を教えてもらったり、そんなどこにでもある幸せな家庭があれば…うれしいよぉ。寂しいんだぁ。今の母親は大嫌い。』

『そうだよねぇ?解るなぁ…。おじさんは両親が共働きだったけど…一緒に旅行に行ったり、勉強を教えてもらったり、楽しい思い出はあるよぉ。』

『良いなぁ。私の家庭はそんな事とは無縁だなぁ…。たいていは、疲れて寝ている母親の顔しかみないなぁ…。それに、たまに1人で泣いている姿を見ることがあるけど…私なんて捨てて、幸せになって欲しいって思うなぁ…。』

『ありがとう。君の純粋な気持ちを聞けて良かったよぉ。では、この紙を渡しておきますので…じっくりと話をしてみてもらえますか?では、明日、再度お伺いします。』

『はい。』


『あれぇ、お母さんどうしたの?今日は仕事ではないのぉ?』

『もう、最悪よぉ。介護のバイトをクビになったのよぉ。

先週から連絡を何度か入れておいたのに、他の仕事をしていたから、連絡もしましたけど、折返し連絡がなかったので書面を渡せなかったから…って。』

『それは、お母さんが悪いなぁ…。』

『でもなぁ、初任者研修しか受講している人はいらないって…あれほど、頑張っていたのに…突然すぎて頭にくるわよぉ。この業界も介護福祉士ではなければ、正社員に出来ないって…それに、アンドロイドが夜勤をやる時代でしょ?それに、夜勤しかやらないで夜勤手当で生活費を稼いでる人は『個人の尊厳』に配慮していないって…あぁ…勉強していれば良かったわぁ。それにしても、この100年で介護や福祉の分野の仕事が人気が出るとは思わなかったなぁ…。昔は3K(汚い。きつい。給料が安い。)と言われていた仕事も、肉体的な労働はAIやアンドロイドがやるようになったし、それに、優秀な介護福祉士がヘッドハンティングされているのよぉ。私はまだ、清掃のバイトがあるけど…家庭は厳しいなぁ…。』

『そうなんだぁ…なら、高校は諦めるしかないねぇ…』

『ごめんねぇ?こんな事なら、離婚しなければ良かったねぇ?』

『そんな事はないわぁ…。お母さんはここまで頑張ってきたんだから、生活保護を申請しようよぉ。』

『そうだねぇ…。生活保護かぁ…それしかないねぇ?』

『私達は家族なんだから、一緒に乗り越えていこう!あぁ…、そう言えば、『市役所から、社会福祉士が派遣されてねぇ?』こんな用紙を置いていったよぉ。』

『何かしら?えぇ…えぇ!大変よぉ。今月から生活保護の申請が出来なくなるって書いてあるわぁ。それに、ダブルワークのバイトの禁止。家庭のあるべき日常を取り戻し、母子家庭の撲滅を推進。子供の成長には家族が大事って…。

その為に2つの方法を選択するようにって…1)レンタル父親を受け入れて家族を得る。(AIにより理想の父親をセレクト)返品は出来ませんのでお気をつけて下さい。又は2)母子家庭を維持する為に、レンタル子供として、富裕層に子供を預けて、レンタル料月15万円を貯金して正社員として、年収400万以上を維持出来たら子供もはお返し致します。なお、レンタル契約中にお互いが納得された場合は本契約となり、家族契約は解消され離別になりますので注意願います。』

『どちらもリスクが高いなぁ…どうしようかなぁ?』

『百合はどうしたいのぉ?』

『私は、お母さんが前進出来るなら、どちらでも良いよぉ。』

『私は、二人で乗り越えていきたいって思うなぁ…。でも、父親はいらないって、離婚した時に決めたのぉ。』

『なら、私が富裕層にレンタルされるよぉ。高校にも行きたかったから…』

『でも、それで良いのぉ?もしかしたら、一生逢えなくなるかも知れないわよぉ。』

『なら、父親をレンタルしようよぉ。』

『そうねぇ。あぁ…でも、明日、リストを見てから決めましょう。』

『そうだねぇ…。新しい父親になる人だもんねぇ?』






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