ドラゴンの聖女と一本角のドラゴンの帰る家

八重垣ケイシ

第1話


 空を飛ぶ。

 羽ばたいて家に帰る。


 森の中、山の中腹、洞窟の前、

 大きな木が1本あるところ。


 大樹をくりぬいて中は人が住めるように作ってみた。

 増築した家屋が大樹に寄り添うようにある。

 まだまだ完璧にはほど遠い。


 ゆっくりと下降して地面に降りる。

 すぐに大樹の扉が開いて、スゥハが出てきた。


「おかえりなさい」


 スゥハが僕を見上げて言う。

 返事は自然と口から出た。


「ただいま」


 僕のただいまにスゥハはにっこりと笑う。

 スゥハは嬉しそうだ。

 スゥハの笑顔を見ると僕は妙な気分になる。

 少し、落ち着かない。

 だけど、悪い気はしない。


『おかえりなさい』に『ただいま』

 僕は何をやってるんだろうね?


 スゥハは人の娘で、

 僕はドラゴンなのに、


 これじゃまるで、

 夫婦みたいじゃないか。


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