第14話 メイドはトイレに閉じ込められました


西園寺が俺の隣で、目の前にはメイドが何食わぬ顔で向かい合う形で座っている。

西園寺は怒っている様子で威圧感が凄まじい。


「ねぇ、何でゆうくんの家にいんの」


「メイドですので。ゆう様の身の回りの世話をするためには合鍵は必須です」


「そ、そうなんだ。ゆうくんはこいつに渡したの?」


「いや、渡した記憶がない」


「そうだった。ゆうくんは記憶喪失だった」


「でもゆうくんがこんなのに合鍵を渡すはずがない!だから返しなさい」


「この鍵はゆう様と私の愛の印です。なので渡しません」


「渡せ」


「渡しません」


「わ・た・せ!」


「嫌です」


「はぁー。ゆうくんも言ってやって。帰せって」


「ゆう様どうか私を見放さないでくれませんか?」


双方から見つめられて答えが出せない。どっちを選べば良いのやら。


「こ、このままでいいんじゃないか?そのかわりメイドは俺の許可なしに入ってはダメということで」


「ま、まぁそれなら別に。気に食わないけど」


「ゆう様...」


「それにあんたルール守りなさいよ。この時間は私のはずよ。部外者はどこかへ行きなさい!」


「私はゆう様の専属メイドですのでこの部屋にしか居場所がありません」


「どうゆうこと?ゆう」


殺気を含んだ視線でこちらを見つめてくる。いつもならゆうくんと呼ぶはずなのに呼び捨てになるの怖すぎる。


「さぁ」


「もう良いわ。勝手にすれば良い。そのかわりトイレの中から一歩も出ないで。それが条件。もしルールを無視するようなら私にも考えがあるから」


「承知致しました。ゆう様との時間のために決まりは守ります」


「えぇ。早く入れ」


「はい」


メイドは渋々ではあったが西園寺の言うことに従うようだ。トイレに行き、ドアを閉めると


「ゆうくん。これからイチャイチャしよ?」


頬を染めて恥じらいながらそう言う西園寺の姿があった。

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