第11話 黒崎千崎とのラブコメ
それでジャンケンの結果朝6時〜12時が柚木、12時〜18時が黒崎、18時〜24時が西園寺、24時〜6時がメイドとなった。
午前の授業が終わり、昼休みに差し掛かった所で黒崎から声がかかった。他の三人も椅子から立ち上がろうとしたが黒崎の様子を見て座り直す。
「ねぇゆうちゃん、そ...その...ね。ゆうちゃんが記憶喪失だから改めて私から言うとね...。えーと、その、わ、私とお昼一緒に食べない?」
顔を赤らめ、純粋な目でこちらを伺ってくる。ほのかな甘い香りが漂い刺激される。だが、
「俺は屋上で一人で食べるのが好きなんだ。だから断る」
「......」
「......」
「なら、私も...」
「だから断るって」
「いやだ。私が勝手に屋上使うのにゆうちゃんの権利はないよね?」
悲しげに言う少女は儚げに微笑を浮かべる。
屋上と場所を言ったのが間違いだったか。それに言わなかったとしても後ろからついていそうだったが。
「勝手にすれば」
そこには美少女と二人きりでご飯を食べられるという甘い誘惑に負けた俺がいた。
「うんっ!」
黒崎は満面の笑みで嬉しそうにうなずいた。
屋上に向かう途中でも後ろから黒崎がついて来て、少し狂気を感じる。だが、その乙女げな視線に高揚感が高まる。周りからは
「黒崎と喧嘩したのかな?www」
「喧嘩してるにしても何で黒崎が後ろからあいつを追いかけるんだよ」
「マジで黒崎に嫌な思いをさせてるなら殺す!」
「早く喧嘩してるなら別れろ!」
と理不尽な声が聞こえてくる。噂を流したロリを恨む。
そして、屋上へ着くと雲ひとつない青空が広がっていて暖かい風が肌にあたり心地よく感じる。
それに周りには誰一人いないのでいつも特等席なのだが、
「き、今日は外でお昼食べようと思って。って、あーー!!もしかしてゆうちゃん!?き、奇遇ね」
「いや、その芝居いらないだろ」
「だって、ゆうちゃんが一緒に食べないって言うから...。偶然を装わないと変だし...。でも、今は一緒だからお昼いい?」
「さっき、勝手にしろと言ったし別に」
俺はドアのそばにあぐらをかき、そう言った。
「そうだね!やったーーー!!!」
「うっっ、っておい!!」
黒崎は俺の了承をもらうと、思いっきり目の前から抱きついて来た。足を腰まで回して、手は首の方まで回してくる。キスする寸前まで顔は近く、吐息や甘い香りが伝わってくる。当然控えめな胸の弾力も直に感じる。唇が艶やかに光り、目を輝かせていて顔が風邪をひいてるかのように赤い。黒崎は目を逸らさず俺と見つめ合ったまま微かに表情が変わるのが可愛いすぎる。
「ゆうちゃんを感じたい...」
黒崎はとろけそうな目で見つめてくる。
「これじゃご飯が食べれないだろ...」
「今日は私を食べる...?」
「ふざけたこと言うなよ」
「ふざけてないの。私は本気よ。このままゆうちゃんの好きにしていいの。ゆうちゃんは私を食べてみたくない?」
「っつ...。ダメだ...。付き合うまではそういうことをしてはダメな気がする...」
「あっ...ん...!ゆ、ゆうちゃん...。やっぱり...」
やばい!
「ち、違うから!」
「か、体は嘘がつけないみたいね...。ゆうちゃんが私に反応してる...嬉しいっ」
「離れてくれ、隣で一緒に食べないか?」
「ゆうちゃんは我慢しなくていいのよ?」
「し、してないから黒崎さんとご飯食べたいな〜」
「千崎」
「?」
「千崎って呼んでくれるまで離れないから」
「わかったよ...。ち、千崎」
「ゆうちゃんからお昼のお誘いして欲しいな〜」
「一緒にご飯食べないか?千崎」
「うんっ!食べましょ!!!」
めんどくさいやり取りをし、やっとのことで昼飯を食べることになった。
「私、今日ゆうちゃんのために手作り弁当を作ったの」
「メイドの弁当食べないと」
いつもはパンを買って食べるが、朝にメイドが作った弁当を貰っているのでそれを食べようと思ったのだ。
「ゆうちゃんは私と長峰さん。どちらを選ぶの!?」
「ち、千崎」
色々とめんどくさくなりそうなので仕方なく今はそう言っとく。
「よろしいっ!」
「なら、その弁当屋上から捨てなさい」
「え?」
思ってもみなかった黒崎の発言に思わず声が出てしまった。
「ゆうちゃんは私を選んだわよね?だったら長峰さんのは必要ないじゃない」
「いや、でも食べ物は粗末に出来ない」
「な、何でよ!?ゆうちゃんは私じゃなかったの!?そんなの、ダメ...」
「違うってそういう意味じゃない」
「ゆうちゃんは私と長峰さんどっちも取るんだね...。酷いわ...」
「ま、待って。一旦話聞け千崎」
「うん」
「俺は食べ物は粗末に出来ない。捨てるなんて言語道断だ。ご飯一粒も残したことがないし、食べ残したこともない。だから、長峰さんではなく千崎が良いと思ったから選んだんだ」
「ほ、本当?」
「あぁ」
「よ、良かったわ。ゆうちゃんの気持ちが知れて嬉しい」
隣に座る黒崎は納得したのか、肩に頭を乗せてきた。
「ゆうちゃん大好き...。ゆうちゃんは私のことどう思う?」
「......」
俺は何て答えれば良いのか分からず、言葉を紡ぐ。
「そっか、まだ記憶喪失だもんね...。私もっと頑張らないと!」
黒崎はお弁当を広げ、作ってきた卵焼きを摘むと俺の口元に近づけてきた。
「ゆうちゃん、あーん」
「えっと」
「ダメ?」
「食うよ」
「うんっ」
卵焼きを渋々食べると、黒崎はとても嬉しそうだった。
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