第8話 メイドとのラブコメ
『矢崎、唯ちゃん行こー』
『行こー』
女子生徒たちが着替え終わり、更衣室から出て行く。そして、更衣室に静寂が訪れる。
「もう良いだろ。俺は出るぞ」
俺はメイドを抱きしめている手を離そうとするが、メイドも強く俺を抱きしめていることもあり、身動きが取れない。
「もう少しこのままでも良いですか...?」
メイドは先程よりもさらに息を荒くし、顔が赤い。服がずぶ濡れで、風邪を引いてしまうのか心配だ。
「大丈夫か?」
「ご主人様がずっと抱きしめてくれるならそれ以上の幸せはないです」
「さっき少しだけって言ってただろ」
「私はご主人様が思っているより欲張りなんです」
「知ってる。ロッカーに連れ込む程のメイドだからな」
「申し訳ないです」
「ならやるな」
「それは出来ないです。私はご主人様が大好きですから」
「そうかよ」
「もうっ!ご主人様は私がどれだけゆう様を思っているのかおわかりですか?」
俺が軽くあしらったことが癇に触ったのか頬を膨らませてる。
「拉致するほどだもんな」
「そうですよ。私はご主人様が居ないと生きていけないんです。だからご主人様が誰かと一緒にいたら拉致します。どこへ居たって拉致するんです。それほどまでに私はご主人様が大好きなんです」
「怖いな」
「恋愛は戦ですから」
ってこれなんのラブコメ?
危ない危ない。ロッカーの中で色々あったせいでメイドとの関係性が深まって、勝手にメイドを受け入れてしまったよ。
違うだろ。こいつは告白もしてなければ付き合ってさえもいないんだ。それにメイドを雇った覚えもない。この状態が異常なんだ。
それにしてメイドは大丈夫なのか?拉致するのが当然とでも言って、何かしそうで怖い。
ロッカーの中では黒崎や柚木、西園寺の姿はなかった。同じクラスなのでプール授業の筈だが、着替えてないとすればまだ俺のことを探しているかもしれない。怖すぎる。
そして、俺は追求する。
「俺はメイドと主従関係を結んだこともないし、ベットで寝た覚えもない。だからメイドが言っていることは全て虚言だ」
「何を言ってるんですかご主人様。強靭な心を持っている私でも少しは傷つきます。主従関係はずっと前にしましたし、昨日はベットでご主人様の命令するがまま受け入れました。ここまで言って私が嘘をついているのですか?ご主人様は覚えておいででないのですか?」
「そうだよ!だ、だったら俺とメイドが最初にあったのはどこだ?」
「学校です。同じクラスですので」
「いつ?」
「昨日です」
「え?」
俺は何か大きな見落としをしているのかもしれない。
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