電視-君の瞳の奥にあるモノ-

千代田 白緋

序章 プラン

第1話<電視>

「お前、聞いた事ある?人工知能グループ「神」のう・わ・さ」


「何それ?都市伝説か何かか?」


「この世界を運営しているのは人間じゃなくて、そのAIの「神」たちらしいぜ。俺たちは知らないうちにAIに管理されていたんだよ!」


「お前、博士号貰いたいんだろ?そんな妄信してたら『』じまうぜ。そう言えば、同じゼミの風間の奴、死んだらしいぜ」


「マジで!あいつ、教授とかにも歯向かってたもんな。死んじまっても仕方ないだろ、はははははは」


 ゲラゲラ笑う同回生は机の上に座り、話をしている。こんな会話がもう一年以上も続いていた。


 彼らの言う『死んだ』は何も、生命の終わりを示す意味ではないと分かっている。


 大学、特に医学部では派閥が競り合っていた。負けた派閥は、ひどい扱いをされるか、解体し、勝った派閥に媚びへつらうか、もしくは耐え切れず退学する。それらを総称して『』、略して『死んだ』と言われるのだ。


 弱肉強食の理念は理解できる。


 だが、どうしてだろうか、こんなにも心が荒んで痛むのは。人はすぐに見たくないものを排除したがる。


 私はただ平和を望んだ。こんな事、野放しにしておけない。


「だがそうか、これを利用すれば……」


 私は大学院の講義の間を使って綿密なプランを立て、研究所で義眼型デバイス「電視」を開発した。これは人類の為になるデバイスだ。


 また研究室で人工知能プログラムを作り上げる事にも成功した。大事な人を失ってまで、作るべきだったのか。今となっては、もう、分からない。


薄暗い部屋で私はエンターキーを力強く押す。


「これで……」


 パソコンのディスプレイ上に人工知能プログラム名「鬼」が浮かび上がった。


さあ、が望みし、計画に歩を進めよう。



 2050年に人は禁忌に触れた。人体の機械化という禁忌に。全世界の一流技術者を集めたW・T・F(世界技術連盟)は体の各部位を世界の研究室に割り振った。日本では技術力を買われ、外界の情報の80%を脳に伝える目を「神崎研究所」に割り振り、人間の全機能を統括する脳を「木島研究所」に割り振った。その他の部位は海外の研究所に割り振られる。W・T・Fの目的は技術による世界平和であり、国際連合の認可も受けていた。


 それが、もたらすを考えることなく計画は進む。神の意思のままに。

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