第36話【心配されるのは有難いこと】

「やっほ〜、透くん、誠司くん、来たよ〜」


昼休み、いつものように誠司、真紀、かおりちゃんの三人が俺の元にお弁当を持ってやってくる。


「なぁ、たまにはかおりちゃん達の教室で弁当食べない?」


「別にいいけど、どうかしたの?」


「いや〜、さ?」


俺はそう言って教室の一点で大勢の人達が集まっている場所を見る。

本当は俺と一姫の弁当は同じなのでそれがバレないように離れた位置で昼食を取りたいというのが、本音だがそれを言うわけには行かないので、一姫の所に大勢の人が集まり五月蝿いというか色々迷惑だからという理由を付ける。


「あ〜、あれですか。

そうですね。

今日は私達の教室で食べましょう」


かおりちゃんは俺の目線で全てを察してくれた。


「一姫さんも可哀想だよね〜」


「だよな〜。

じゃあ、行くか」


そうして俺達は教室を出てかおりちゃんの教室に向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ただいま戻りました」


「ん、おかえり」


学校から帰り学校出てた宿題を終わらせ、リビングで一息ついていた時、放課後、先生に色々な事の説明をしに行っていた一姫が帰ってきた。


「どうだった?」


「学校側へは事前にお義母さんが電話で事情の説明をしてくれていたのでその事の確認だけですぐに終わりました。

ですが、その後、他の心配してくれていた先生方にいろいろ言われてしまい遅くなってしまいました」


一姫は元々先生方からの評判が良く心配している先生方が多い。

しかし、一姫の事は事情が事情だけに校長、教頭、担任の先生ぐらいしか詳細は知らされておらず、校長から箝口令も出されているので他の先生方は詳しい事が何もわからないので一気に直接質問したのだろう。


「そうだったのか。

先生に生徒といろんな人に質問されまくって疲れたろ」


「はい、正直もうクタクタです。

でも、心配してもらえるのは有難いことなので複雑な気持ちになっています」


「今日の晩御飯は出前でも取るか。

今から家事はきついだろ?

本当は俺が作るのがいいんだろうけど、ご存知の通り俺の料理の腕はあんまりだからな」


俺は肩を軽くすくめながら言う。


「いえいえ、悪いですよ。

あまり凝ったものは難しいですが私が作ります」


「そうか?

別にお金のことなら気にしなくていいんだぞ?」


「お金は大事ですよ。

出来ることはやらないと。

それに私って結構料理するの好きなんですよ。

また、疲れ過ぎて動けないって時にお願いします」


「そうか、じゃあ、お願いするよ。

俺はお風呂洗ってくる」


そう言って俺はソファーから立ち上がる。


「はい、お願いしますね」

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ホームレスしそうな美少女を拾ったのでメイドにしたいと思います 栗音 @snarou

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