第28話

ヒュウウウウ


勇者「これ……落ちないよな?」


僧侶「……高い」


魔法使い「ひい……ゆ、ゆうしゃぁ……」ぎゅっ


勇者「あー……そういやこういうの苦手だったな、お前」


魔法使い「ぜ、ぜったいにはなさないでね……」


勇者「離さねぇっての」ぎゅ


氷幼女「……なぜ担ぐ。降ろさんか」


考古学者「今落ちられても困りますし」


氷幼女「……ふん」ぎゅっ



勇者「しかし……なんかうまくいき過ぎてる気がするな」


僧侶「……確かに」


氷幼女「あまりに静かすぎるの。見張りがおったわりには」


魔法使い「なんでだろう?」


勇者「まぁ、何があっても進むしかないが」


魔法使い「暗いよ……高いよ……」


僧侶「……なにも、ない……ひま」


考古学者「気楽なものですね。これから待ち受けているのは魔王というのに」


氷幼女「何を今更。気を張っても仕方あるまいて」


考古学者「……クク」


勇者「……見えてきたな」


魔法使い「あれが魔王の城か……」


僧侶「……大きい」


氷幼女「む……」


「ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ」


ぞろぞろぞろ……


勇者「うまくいきすぎてるとは思ってたが……出待ちしてたわけか」


考古学者「これは大変そうだ」


ぞろぞろぞろぞろ……


魔法使い「登ってはこれないみたいだね」


僧侶「……チャンス?」


氷幼女「どうやらそのようじゃな」


魔法使い「それなら……走れ、稲妻!」


バリバリッ


「ピガガー ガガー……」ヒュー ゴロゴロ


魔法使い「少しでも数、減らしておいた方がいいよねっ」


僧侶「……掃討」



勇者「あれは……妙なくぼみがあるな。あそこが終点か?」


氷幼女「ふぅ……やっとか」


僧侶「……入口、見当たらない」


考古学者「このまま降りたら囲まれてしまいますね」


魔法使い「……てぇいやぁっ!」


ドゴーン


魔法使い「……うぅ、ビリビリするぅ……」ジーン


魔法使い「でも、これで道は出来たよっ!」


勇者「……ほんと、お前が敵じゃなくてよかったよ」


僧侶「……同感」


氷幼女「本当は魔物なんじゃないか?おぬし」


「ハイジョー!ハイジョー!」ガシャ ガシャ ガシャ


魔法使い「もう!バカなこと言ってないで……やぁっ!」ドゴン


僧侶「……てあっ!」ガギィン


氷幼女「どけいっ!」ジャララララ ガン


勇者「減らしたはずなのに凄い数だな……」


考古学者「魔王との戦いを考えると、あまり消耗したくないところですね……」


「ハイジョッ!!」


氷幼女「っ!」


勇者「危ない、氷っ!」


氷幼女「……っ!?」


魔法使い「てやぁっ!」


ゴォンッ


魔法使い「無事!?」


氷幼女「あ、あぁ……」


氷幼女(今の魔力は……)


考古学者「……敵の波が緩くなりました。急ぎましょう」



魔法使い「ふぅ、なんとか抜けたね……」


魔物「テキ、カ……ココハトオサン」ガシン ガシン


勇者「……さっきまでのとは雰囲気が違うな」


魔法使い「次から次にキリがないね……」


魔物「フン!」ブゴォン


魔法使い「おっと、当たらないよ!」タァン  


ドゴオオオン


魔法使い「ボクの斧の何倍あるかな?」


僧侶「……でかぶつ」


勇者「一体だけなら、俺の力で……」


氷幼女「……待て、勇者」


勇者「……?」


氷幼女「魔王がどれだけの力を持っているか分からん以上、雑魚相手に浪費は得策じゃなかろう」


勇者「それはそうかもしれないが……」


氷幼女「はよう行けと行っておるんじゃ」


勇者「氷……」


氷幼女「何をボーッとしとるか、ど阿呆!」


勇者「……行くぞ、二人とも!」


魔法使い「……うんっ!氷、無事でねっ!」


僧侶「……頑張って」


魔物「マテッ……!」


氷幼女「余所見をしておる暇があるか?」


魔物「マズハキサマカラ……」


考古学者「……よくある物語だと、死に役がするような行動ですね」


氷女王「ふん……わらわが死ぬわけなかろうぞ」


考古学者「大した自信だ」


氷女王「……何を言っておるか、おぬしがおるからじゃ」


考古学者「……ふふふ」

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