第2話

勇者(昨日は酷い目にあった……半魚人どもががあんなに強いとはな)


勇者(村まで帰ってくる間に大分時間がかかってしまった)


勇者(こんな変なところで魔法使いのありがたみを感じてしまうとは……)


魔法使い「……(むす」


勇者「……お、おい。魔法使い……」


魔法使い「……(ジトーッ」


勇者(あーあ……この目か……)


勇者(俺も弱いなー、この目に)



勇者「……すまん、俺が悪かった」

勇者「料理人なんて、仲間にしないから……許してくれ」



魔法使い「……ボクも、悪かったよ」


魔法使い「料理下手なのは、絶対なんとかするからさ」


勇者(試食につき合わすのは、勘弁してくれよ……)



勇者「さて、とりあえず魔王が復活したことは分かったが」


勇者「次の行き先が思いうかばないな」


魔法使い「いつも通り、魔物倒しながら適当に旅すりゃいんじゃないの?」


勇者「いや、一応勇者だしさ」


勇者「魔王が復活したんだったら、やっぱ倒さないといけないかなぁと」


魔法使い「おー、勇者もちゃんと考えてるんだねー」


勇者「まぁ、実際に倒すのはお前なんだろうがな」


勇者「しかしなー……港町じゃたいした情報は集まらなかったし」


勇者「どこから手を付けたもんか……ん?」


魔法使い「どしたの?勇者……あ」


魔物「ゲギャギャギャギャギャ!」


僧侶「……ぐ」カキン カキン


子供「うえーん……たすけてぇ……」


魔法使い「子供が襲われてる!」



僧侶「……う、く」ガギ  ガギギン


子供「びええええん!」


僧侶(子供……だけでも……)


魔法使い(あの子、そろそろやばい……間に合えっ!)


魔法使い「うなれ……雷雲!」ピカッ  ドゴゴォーン!


魔物「グギャウアアアアアア!」ボシュッ


僧侶「……っ!?」バゴォッ ズザァ


僧侶「……」くたっ


子供「うわあああああん!!!」


魔法使い「……ありゃ?」


僧侶「……う、く」


僧侶「……はっ!」ガバッ


勇者「おお、起きた起きた」


魔法使い「よ、よかったぁ……」


僧侶「……?」


勇者「とりあえず、意識ははっきりしてるか?大丈夫か?」ドクドク


僧侶「……あなたが……大丈夫?」



勇者「とりあえず、子供は無事に送り届けといたよ」


僧侶「……よかった」


魔法使い「ほんっとうにごめんなさい!まさか、あんな風になるなんて……」


勇者「お前の力は強すぎんだよ、まったく……」


僧侶「……魔法、使い……なの?」


魔法使い「え?」


勇者「まぁ、その背中のそれを見りゃ疑問に思うだろうな」


僧侶「……不思議」


魔法使い「あはは……そうかなぁ?自分ではわかんないや」ドスン


勇者「まぁ、その代わり防御低下呪文すら唱えられんがな」


魔法使い「それは……そうだ!僧侶ちゃん、一緒に行かない?」


僧侶「……え?」


勇者「お、おい……いきなりそんな……この子にも悪いだろ……」


勇者(実際は俺の立場が危うい……)


僧侶「……」コクリ


勇者「え、えぇっ!?」


勇者「さっきのに恩義感じてるとかだったら気にしなくていいんだぞ?」


勇者「魔法使いはいつもおせっかいであんなことしてるし」


魔法使い「おせっかいってなんだよー」


勇者「だから、考え直したほうが……」


僧侶「……気になる」


僧侶「……魔法使いの、こと」


僧侶「……だから、着いてく」


魔法使い「やったー!よろしくねー」


勇者(はぁ……また影が薄くなるな、俺。勇者なのに……)


僧侶「……よろしく」


勇者「さーて、僧侶が加わったが……結局、どうすっかね」


僧侶「……?」


魔法使い「あぁ、僧侶ちゃん分かんないか。それがねぇ……」


僧侶「……魔王を、倒しに……」


勇者「まぁ、そういうこと。一応勇者なんだ、俺」


魔法使い「勇者とは言っても、戦うのはボクだけどね」


僧侶「……ふむ、ふむ」


勇者(それを言うなマジで……)



勇者「そういや僧侶」


僧侶「……?」


勇者「お前は、その手にした杖で魔物を撲殺したりしないよな?」


僧侶「……」コクコク


勇者(よかった……)


勇者「さーて、だべってても仕方ないし、さっさと行き先考えるか」


魔法使い「そうだねー……こうしてる間にも魔王がいろいろしてそうだしねー」


僧侶「……」コク


勇者「とりあえず、情報を集めたいから……どこか大きな町へ行こう」


魔法使い「こっから大きな町って言ったら、どこ?」


勇者「……辺境の王宮、かな」


魔法使い「えぇ!?あのアホみたいに長い洞窟抜けたとこじゃん!」


勇者「しかたねぇだろ!この辺にあるでかい町はそこぐらいだろ?」


魔法使い「あーもう、分かったよ……ったく、移動呪文も使えないんだから……」


勇者「ぐっ……」


勇者「……で、洞窟まで来たはいいが……」


僧侶「……魔物」


魔法使い「めちゃくちゃいるねー……」


勇者「辺境の王宮で、何かが起こってるのか?」


僧侶「……急がないと」


魔法使い「人の命がかかってるかもしれないから、のんびりしちゃいられんね」バッ


僧侶「……っ!」バッ


勇者「えっ」


僧侶「……強化呪文っ」キュイーン


僧侶「……はっ!」ズバッ


魔法使い「おんどりゃああ!!」ズガーン


僧侶「……防御呪文っ」キーン


魔法使い「ありがとう、僧侶ちゃんっ!」ドゴーン


勇者「なにこれこわい」



魔法使い「ふむ、あらかた片付いたね……」


僧侶「……進む」


勇者「あ、あぁ……そうだな……」


勇者「なぁ、僧侶」


僧侶「……?」


勇者「さっきの言葉、嘘だったのか?ほら、杖で……」


僧侶「……殴らない、切る」


勇者「……」

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