勇者「その武器重くねぇの?」

ハナミツキ

第1話

魔法使い「ん?これのこと?」


勇者「うおっ!あぶねぇ!」


勇者「なんで魔法使いのくせにそんな大きな斧使ってんだよ」


魔法使い「最近は魔法使いもちからの時代なのさー」


勇者「いや、俺を回復役に使ってんのがさらに問題なんだよ」


勇者「戦わせろ、俺を」


魔法使い「えー、だって勇者弱いじゃん」


魔法使い「魔法の強さどころかちからもボクに負けてるしー」


勇者「ぐ、ぐぅ……」


魔法使い「ボクは回復魔法使えないんだし、適任だと思わない?」


勇者「くそぅ……どうしてこうなった」


勇者「……!」ガサッ


魔法使い「……敵?」


勇者「ああ、そうみたいだな……結構多いな、こりゃ」


勇者「オークの群れか……10匹は軽く越えてるな」


魔法使い「んー……そのぐらいならっ!」ガサッ


勇者「お、おいっ!魔法使いっ!」


魔法使い「おおりゃぁっ!」ザシュオンッ


勇者「……やっぱでたらめに強いよなぁ、こいつ」


勇者「俺が勇者なのに……あ、補助呪文っと」


魔法使い「ふぅ……片付いたね」ガシャン


勇者「毎度のことながら一瞬だな……魔物に同情するよ」


魔法使い「まーねー……でも、勇者の補助があるからだよ?」


勇者「無駄な慰めはいらねーっての……」スタスタ


魔法使い「……むぅ」



魔法使い「ねぇ、これからどうするの?」


勇者「んー、最近魔王がどうこうとか騒がれてるしな、町で情報収集かな」


魔法使い「この近くっていったら……あの港町かな?」


勇者「そうだな」


魔法使い「うへー……ボクあの町好きじゃないんだよなぁ」


魔法使い「風がベタベタしてるし……」


勇者「……置いてくぞ」


魔法使い「あう、待ってよー」



――港町


勇者「……なんか、活気が感じられないな」


魔法使い「前に来たときはもっと活き活きしてたのにね」


勇者「妙だな……船が一つも出てないじゃないか」


勇者「なぁ、あんた」


店主「ん?なんだ、あんたら。ここにはもう売るもんなんてねーよ」


勇者「……どういうことだ?」


店主「海で魔物が暴れてんだよ。おかげで漁は出来ないし、交易船も来ない!」


店主「この町は、終わりだよ……」


魔法使い「ねぇ、勇者」


勇者「……はぁ。本当に魔王復活してるみたいだな」


勇者「これだから魔王は……何回復活すんだよ、マジで」


魔法使い「ボヤいてても仕方ないって!町長さんに話を聞きに行こう!」ガシッ


勇者「魔物が倒せるからってはしゃいでやがる……」


勇者「こいつが勇者でいいだろもう」ズルズル


町長「あいつらには、言葉も何も通じません」


町長「ただ、破壊を楽しみ、わしらの町を壊していくだけ……」


町長「最初は傭兵を雇いなんとか防いでいましたが、その金も無くなり……」


町長「どうか旅の方!あの魔物達を退治してくだされ!」


魔法使い「だってさ、勇者!」ウズウズ


勇者「だー、ただ働きの臭いがプンプンするぜ……」


勇者「とか言っても、どうせ力ずくで行かせるんだろ?」


魔法使い「もちろん!」


勇者「……なら聞くなってーの」


町長「ありがとうございます!」



勇者「さて、退治依頼を受けたわけだが」


勇者「なんだこの小船は。二人用っておい」ギコギコ


魔法使い「だってー。町長さんお金無いって言ってたしー」


勇者「お前これ……ひっくり返されたらどうすんだよ」


魔法使い「泳ぎながら戦う!」


勇者「……もう最初から泳いでこいよ」ハァ



勇者「……っ!」ギコギコ


魔物「ギシャアアアアア!」


魔法使い「来たね……準備はバッチリだよ!」キュイーン


魔法使い「落ちろ、雷撃!」ドゴーン


魔法使い「燃えろ、火球!」ボゴワァ


勇者「……やっぱ、呪文の破壊力も凄いな……おっと、防壁っと」カキン


魔物「フシュルルッルル!」


魔法使い「はぁ……はぁ……キリがないや」ボシュン


魔法使い「ま、魔力切れか……とおっ!」ザブーン


魔法使い「おりゃあああ!!」ブオン ブオン


魔物「ギャアアア!」


勇者「……こいつは、なぜに魔法使いなんだ?」ギコギコ


魔法使い「……ふぅ、ふぅ」ガシャン


魔法使い「お前で終わり、だね」グシャッ


ボスみたいなの「ギャ、ギャギャギャ……」ブクブク


魔法使い「ふー……やっと終わったー!!」


勇者「予想以上に数多かったな。ボス的なのもいたし」ギコギコ


魔法使い「でも、これでこの海域も安全だね!」


勇者「まぁ、しばらくの間はそうだろうな」ギコギコ


魔法使い「さー、帰って町長さんに報告だーっ!」


勇者「ああ、そうだな」ギコギコ



魔法使い「ん?なーに?」


勇者「無い胸が透けてんぞ」


魔法使い「……(チラッ」 「……」ボッ


魔法使い「……み、る、な、ぁっ!」ブオン


勇者「おいおい、シャレにならんぞ……って聞いちゃいねぇ」グシャッ



魔法使い「これで、しばらくは安全なはずですよ」


町長「ありがとうございます!なんとお礼をすればいいか……」


魔法使い「いえいえ、困ってる人を助けるのは当然のことですから!」


町長「……しかし」


魔法使い「どうかしましたか?」


町長「……ご一緒だった方の姿が見えませんが、まさか魔物との戦いで……?」


魔法使い「あー……いえ、勇者なら無事ですよ」


魔法使い「ただ、少し別の場所にいるだけです」


町長「そうでしたか……でしたらいいのですが」


町長「こんな村を守るために死人でも出たら、それこそ申し訳ない……」


魔法使い「いえ、勇者は世界を救うものですから!死んででも村を守るべきです!」


勇者(お前が殺しておいてよく言うな、おい)


魔法使い「宴会なんて悪いっていったのに……」


勇者「いやまぁ、好意は素直に受けておこうぜ。金じゃないのが悔しいが」


魔法使い「あれ、勇者……今日は随分回復早いね」


勇者「お前が疲れてたから威力が弱かったんだろ。あー、体いてぇ」ズキズキ


魔法使い「しかし、勇者ってのは凄いよねぇ。ほぼ不死身だもん」


勇者「そりゃぁ、精霊の加護的なもんがあるからな。勇者だし」


勇者「死なないだけで力が無きゃなんの意味無いがな……」


魔法使い「……」



魔法使い「なんかさ、さっきから変に突っかかってない?」


勇者「ん……そうか?」


魔法使い「文句があるならさ、はっきり言ってよ。気分悪いよ」ガシャッ


勇者「お前、武器の音鳴らされながら言われて本音が出るわけねぇだろ……」


魔法使い『……少しは、頼ってんだからさ(ボソ』


勇者「ん?なんか言ったか?」


魔法使い「……なんでもないよ!ふん!」ブン


勇者「ちょっ……治ったばっかで死ねるかぁ!」ガギィィン



魔法使い「ふぅ……お腹いっぱいなんて久しぶりだよ……」


勇者「まぁな、旅してるとどうしても食事を軽視しがちだからな」


勇者「今度、料理人でも仲間にしてみるか?」


魔法使い「……なんで?」


勇者「ん?」


魔法使い「だって、ボクが作ってるじゃないか!」バタン


勇者「いや、お前のあれはメシって言わない。炭か毒のどっちかが正しい」


魔法使い「勇者のだって食べ物としての見た目をしてないじゃないか!」


勇者「俺のは食べれるからいいんだよ。お前の食べ物ですらない」


魔法使い「……うー」ガシッ


勇者「おいおい……何する気……」メキメキ


魔法使い「勇者の……あほおおおおお!!!」ブン


勇者「……あー……れー」ピュー  ザブン

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