第23話:ドイツで初めての退院と医療費

僕が居た病院にはあるルールがある

最長治療期間は8週間。

それはどんな条件、理由が有っても、8週間ルールが絶対的なんだ。

理由は、正直分からない。

例え患者が出たくないと言っても、強制的に退院させられる。


親友の死で鬱病を発症した、男がいる。

彼はウェブデザイナーで、40代の男だ

彼はこの病院へ入院したのは2度目だそうだ。

いつもフラッシュバックする、辛い、夜が怖い。

そんな気持ちだったそうだ。

そんな彼は医者との面会後言っていた、

「俺は明日退院だ、俺には無理だ…」

とブルーな顔で言った。

そして、翌日それでも出て行った。


ドイツは医療費無料と言う話は有名だ。

このトリックは、保険会社だ。

保険へ加入していれば、医療費は無料となる。

日本では保険の加入が絶対で、3割負担だ。

ドイツの場合、加入は任意だ。

しかし、入らなければ、


・病院へ行けない

・身分証として強い

・持っていないと、就職出来ない場合がある


つまり、保険が無い人は、人権が無い。

そう言っても語弊が無い位、重要な物だ。


病院は保険会社から金銭を受け取るのだ。

保険会社は治療内容の有効性、妥当性が非常に重視される。

病院は、保険会社へどんな薬、どんな処置をしたのかを保険会社へ送る。

それに問題が無ければ、金銭が支払われる。

しかし、保険会社はかなり多い、その中にどんな種類の保険に入っているか

そんな要素が入ってきて、何がどれをカバーしてるか。

カバーされない場合は、滅多にないが、時間的制限が有ったり、する


ピーターが良い例だ。

彼はアルコール中毒で入院をしていたが、保険のカバー範囲を超える為

退院を強いられた。時間的制限だった。

彼の不倫相手が病院に居て、彼はどうか聞いた所

彼は満足に治療を受けれず、外へ出て、またアルコール中毒者になった。

しかし、彼は戻ってこなかった。


僕は10週間居た。

最初の2週は効果的な投薬が行われなかった事から、

この2種間はカウントされなかった。

それでも10週間は長い、凡そ2か月とちょっと。

この時は、自分がどんな状態なのか分からなかった。

良いのか、悪いのか、どうなんだろう?

そう思っていた。

それでも出なきゃならないから出た。


退院時間は10時だ。

10時までに荷物をまとめ、カウンセラーと会って、

どう過ごすべきかを確認する。

退院時は、大体みんなにさよならを言う。

ダニー、マーカスやその他諸々。

「もう戻ってくるな」

まるで出所した奴に向けて言う言葉だ、缶詰なのは間違いないが。


最後の面談。

カウンセラーとは軽い会話だ。

日常生活に戻ったら、注意すべき点を教えてくれた。

・焦らない

・無理しない

・出来る事を毎日やる

・規則正しい生活をする

こんな所だ。

軽い説明を受け、感謝を伝え、手紙を受け取り、僕は時間を待った。


10時前、嫁さんが車で迎えに来てくれた。

僕は嫁さんと抱き合い、久しぶりと言った。

そして嫁さんは「良くなった?」と聞く

僕は「分からない、前より、動ける」そう答えた。


取り合えず、家に帰った。

嫁さんは看護師から受け取った手紙を確認した

嫁さんは絶句した。

何故なら、書いてある内容が医師の目線から書いた

僕の評価だ。

嫁さんは、読んでいるが、不本意の様だ。

要約すると

・病院内では無口で人と関わるのが苦手

・嫁さんが彼のプレッシャーになっている

・鬱病のトリガー死、希死願望はまだ残っている

・現状、一部薬の効果が出てない、期間が短すぎる為。

・月1で血液検査と診察が必要

色々と書かれていた様だが、あまり良い事は書いてない。


あんまり良いニュースじゃない。

取り合えず無理はしない様に…と思っていたが、

結果として、ダウンし、隔離病棟へ戻る事になった。


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「あの手紙書いた奴、表出ろ」って位不愉快な手紙でした。

今も現物があるのですが、ドイツ語覚えて読んだら、切れそう。


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