第33話 大頭


 「よお、」


 「・・・・・・・や、やあ」


 猫を肩に乗せている男は、飛びまわっていた乙葉に見つかってしまった。顔が青ざめるのを、必死にこらえながら気丈にも口を開いた。


 「確か、お前。俺とやりたかったんだよな。今やるか?」


 「い、いやいや。今は討伐の最中やろ?」


 (そうじゃ、早くごまかして逃げえ)


 肩の猫がひそかに耳打ちする。使い魔の彼でさえ、まずいとわかるほど乙葉纏う妖気はけた違いだった。


 「・・・・・・」

 

 あきらかに失望をあらわにした乙葉は、刀に手もかけずに男の横を通り過ぎていった。


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 「どこにいるか、わかるか?」


 その頃、妖世についた大頭は、式神とともに道路を疾走していた。周りによってくる悪霊を、ハエでも払うように殺しながら。


 「うん、これだけ妖気が駄々洩れだとね。私は会ったことあるし、わかるんじゃないかな」


 「俺に用か?」


 「「っ!」」


 不敵で嬉しそうな声が上空から降ってきた。2人が急いで視線を上げると、電柱の上で胡坐をかいた乙葉が、にんまりと笑顔を浮かべていた。


 「なっ!、わしならわかるが、お主の探索を欺くとは・・・・・」


 「・・・・・でも、わかったこともあるわ」


 式神は一歩前に出て、指を突き出した。


 「あなた、


 「気絶しながら電柱に登れるほど、俺は器用じゃないがな」


 「・・・・からかうのはやめなさい」


 きつい口調になった式神にため息をついた乙葉は、電柱から飛びおりた。


 「はいはい・・・・・・・・・・・・ふう、この機会に面倒ごとを清算しようと思ってたんですけどね」


 一瞬で雰囲気が以前の柔らかなものに変わり、大頭は目を見張った。


 「私たちも面倒ごとってこと?」


 「違いますよ。俺のこと話してたから気になったんですよ。まあ、口調はケンカ腰でしたけど」


 「・・・・・まあ、いいわ。うちのが話あるって」


 式神が顎をしゃくると、大頭は咳ばらいをして話し始めた。


 「たしか、鴉宮乙葉くんだったかな。単刀直入に聞こう。君は自分の異常性に気づいているかね」


 「まあ、はい」


 「・・・・失礼を承知で言うが、分家がそんな力を持つとは考えられない。その体や術は君独自のものなのかね」


 「体に関しては、数代前からこうですよ。ただ、今まで暴走の危険があったうえに、分家だったので公開討伐には参加してませんけど」


 「・・・・・・そうだったのか。だが、君はその妖気と霊力を保っているじゃないか」


 路上での質問は、まだまだ続きそうだった。


 ※次回更新 6月13日 土曜日 0:00

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