第14話 変化


 それから乙葉と美咲は合う機会が増えた。学校では昼休み中、一緒にいるし、放課後も大体乙葉の家に集まっている。


 週末も訓練に当てていることが多い。


 (やはり、変化はいろいろなものを与えてくれるな)


 感情面でも、習慣面でも。彼女によってもたらされた効果は計り知れない。


 「どうしたの?」


 昼休み、昼食を食べていると、美咲が乙葉の顔を覗き込んだ。


 「いや、少し考え事をしてただけだ」


 神楽祭まで1か月を切った。霊力操作はなんとかなってきているが、いかんせん持続時間が短い。その訓練に加えて、信三さんからの舞の手ほどきもある。


 「さ、始めようか」


 「うん。時間ないしね」


 早速、美咲は霊力操作を始める。ここまでものになってしまえば、正直乙葉にすることはない。ただ、反復あるのみだ。


 「ねえねえ」


 「ん?」


 美咲は霊力操作をしながら、乙葉に話しかけた。最初に比べると、随分器用になったものだ。


 「神楽祭って舞以外に何をするの? 私は行ったことがないんだ」


 (それを俺に聞くのか・・・・。まあ、知ってるけど)


 「俺も実際に行ったわけじゃないけど、爺さんの話だと舞と悪霊の公開討伐、懇親会だったかな。公開討伐だと、競争形式もあるらしい」


 「公開討伐って、自信ないなあ。もちろん法具は使用禁止でしょう?」


 「いや、使ってもいいらしいぞ。どちらかというと法具の使用訓練の意味合いの方が大きいらしい」


 「そ、そうなんだ」


 (・・・・心配だなあ)


 法具を使うことも、懇親会も彼女なら問題ないだろう。舞のほうもこのまま訓練していけば、ギリギリではあるが見れるものにはなるはずだ。しかし、


 (女の当主は珍しい。迫害されないという保証はない)


 彼女もそこはわかっているはずだ。それでも、長年悪霊とかかわり、性格が捻じ曲がってしまった人も少なからずいる。


 «なら、ついていけばよかろう»


 (お前はいつのまに俺の心読めるようになったんだ?)


 «ケケケ、あれだけ強く念じればいやでもわかるわい。ついていってやればよかろう»


 (・・・うるさい)


 «へいへい»


 「乙葉?」


 「ん、どうしたの?」


 訓練の手を止めた美咲が乙葉に近づいてきた。


 「乙葉の霊力操作を見てみたいんだけど、いいかな?」


 (なんだ、そんなことか)


 「ああ、いいよ。せっかくだし、解説しながらやろうかな」


 「うん。よろしく」


 乙葉は右手を前に出す。


 「まずは、今美咲がやってるレベルの霊力操作ね」

 

 乙葉の右手に霊力が集まっていく。太い血管に沿っているかのように霊力が循環する。


 その瞬間、乙葉の体が窓に向かって飛んだ。


 「誰だっ!」


 ※次回更新 3月25日 水曜日 0:00

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る