第13話 デビュー


 2人は篠宮家に寄り、装備を整えたのち、霊装をほどこした。


 「我、契約文を捧げ、わが身に宿る式神に問う」


 礼二に続くように美咲も霊装を展開し始めた。


 「我、あまねく森羅万象の御身に問う」


 乙葉が懐中時計を、美咲がイヤリングを掲げる。


 「霊装展開 鴉」


 「霊装展開 狼」


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 「霊装はどう? 前と比べて変わった?」


 乙葉が聞くと、美咲は嬉しそうに答えた。


 「うん!、すごい快適だよ」


 そういった美咲の霊装は全身を覆う鎧に槍。対して乙葉の霊装は黒コートに刀だ。


 「じゃ、行くぞ」


 「わかった!」


 乙葉のコートがざわめき、美咲の鎧が輝いた。妖世に入った2人は疾走し始める。


 「まず、俺が軽く一撃を入れて引き付けるからその後は任せるよ」


 「が、がんばる・・・」


 今度の悪霊はビルの壁に張り付いて、よだれを垂らしているカニみたいなやつだった。足が6本もある。


 「うえ~。気持ち悪い」


乙葉はビルの壁を駆け上がり、拳を引き絞った。


 「おっと、」


 拳が当たる寸前に人差し指だけをのばして、当てる。それだけでも悪霊の足が2本ほど消し飛んだ。


 美咲はその後に続くように飛び上がり、槍を構えた。


 「やあああ!」


 攻撃に気づいた悪霊が残った足で攻撃してくるが、鎧にはじかれてしまっている。


 「おりゃあ!」


 そのまま突っ込んだ美咲は槍で悪霊を串刺しにした。悪霊は白い泡を盛大に吐きながら、落下した。


 「で、できたよ! どうだった?」


 美咲がうれしそうに血がべっとり付いた槍を振り回している。


 「あ、ああ。前より良くなってたし、持続時間だけを伸ばせば問題ないだろう」

 

 (攻撃を回避するとかないのか・・・。ごり押しだな)


 「そ、そっか。他には悪霊いないの?」


 「そうそう現れないよ。それに現れるときは大体信三さんが教えてくれる」


 「父様が?」


 「うん。易占でね。俺も一応できるけど、信三さんのほうがうまいから。そのうち、教わると思うよ」


 「易占、かあ。難しそう・・」


 「あれもコツをつかめればそれなりにできるようになるよ。それに何をするにせよ、霊力操作は重要だ」


 「なるほど」


 2人は霊装を解き、現世に戻った。


 「今日はありがとう」


 「どういたしまして。・・送ってくよ」


 「う、うん」


 2人とも学生服のままだが、荷物は置いてきてある。何事もなかったように歩いている群衆に交じる。


 (話すことないな・・・・)


 「あ、あのさ」


 「ん?」


 「明日の昼、暇?」


 「うん。ていうか昼は大体暇だ。委員会にも入ってないし」


 「そ、そうなんだ。じゃあさ、また生徒会室に来れる?」


 「いいのか?」


 「うん、よろしくね」


 ※次回更新 3月21日 土曜日 0:00

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