第4話

 

 リビングで静かにカチャカチャと食事の音がしている。


「……まだ怒ってんのか?」


 そろそろ許しても良いかなぁ。

 話したい事もいっぱいあるし……。


「なぁ、龍って……どうしてる?真白も元気か??」


 ドキッ。

 

「龍……は、元気だよ?もちろん真白も」


「そっか……。龍、怒ってたりすんのかな。まぁ、もう忘れてるかもしんないけどー…」


 あたしは、食べている手を止めた。


「……それ、本気で言ってるの?」


 ずっと、心の中で思っていた事を吐き出す。


「忘れるわけないッッ!私達……親友でしょ?なんで黙って消えたのかずっと心配だったんだよ?!龍だって……怒ってるよ!プンプンだよ!!」


 海夏君も食べる手を止めた。


「ごめん」


「一人で悩まないで、相談してよ……」


「ごめん。ごめんな」


 泣くつもりなんかなかったあたしの目には、涙が溢れている。

 

「ー…龍には、ちゃんと謝った方が良いよ。激怒だから」


「ー…うん。明後日の学校の時謝るよ」



 チュンチュンと可愛らしい雀が、窓辺で鳴いている。


「ん〜…もう少しだけー…」


 ふわりは布団に潜り込んだ。


 ブワッ。


 気持ちいい布団をもぞもぞ?……あれ?

布団に潜ったはずなのに、眠い目を擦りながら見ると消えていた。


「おはよ!ふわり」


 目の前には海夏君の綺麗な爽やかスマイル顔が、ドアップ。


「か、海夏君ッッ??!!」


「早く起きろよ。お寝坊さんには罰を与えよう!今日、一日俺と付き合え」


「え?!」


 付き合うぅううううう??!!!




「か、海夏君!それは……ちょっと…あッ!」


 あたしに向かって悪戯にニヤッとする。


「このマグカップに描かれてるゴリラって、お前のパー…モゴゴ」


 その先を言わせない!恥ずかしくて死ぬ!!

 必死に海夏君の口を塞ぐ。


「んんん〜…!!」


 息が出来ないからか、苦しそうに口を動くのがわかった。

 思わず塞いじゃったけど、唇が……。

ふにふに感触と吐息混じりに『く、る、し、い』と手に伝わる感触を感じる。

 なんか、ヤバい。

 パッと手を離し少し顔が赤くなった。


「ごめん」


 「ぷはぁ〜。死ぬかと思った」っと大きく息をしているが、あたしはそれどころじゃない。


 抑えていた右手を見つめながら、グーパーグーパー動かした。


 まだ、感触と感覚が残ってる……。


「どうした?しゃがみ込んで、気分悪いのか??」


 火照った顔を見られないよう、手で顔を隠す。


 まだ海夏君の生活用品の買い足し始まったばかりなのに。

どうしよう?!!


 あたしはその事ばかりで気づいてなかった。


実は顔を覆った手が丁度海夏と関節キスの位置であったことをー…。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る