2021年

janvier 1~5


『吹』2020.1.10 #詩コン


前から二番目右から二番目で待っていた従順な彼はあくびひとつで世界をむと言う。


口下手な俺に一息でできることは

善属性を与えられた酸素と嫌われ者の二酸化炭素と透明な窒素とちりばめられた塵と希望をして

愛しい虎の子の命の灯火を消すように優しく

彼の不均等な頭に降り積もった埃を払うことくらいだ。


俺が吐き出した空気の末路は彼の薔薇色の口唇を抜けた先にある。

a だったら溜息だったから慰めて。


◇ ◇ ◇

ボオドレールの『悪の華』を読もうとしたらちょっと埃が気になったので吹き払った、というだけの話です。お耽美な雰囲気を目指していました。「欠伸で世界を嚥む」とか「薔薇色」は詩の中に出てきたフレーズです。「薔薇色」は岩波の赤でもあります。aだったらってのは、フー(吹く)はu、ハー(溜息)はa ってことです。説明になっているような、なっていないような……。

弁明しておくと、この解説もどきは詩をひとつひとつ説明するために書いているわけではなく、ただ詩を載せるだけだとTwitterで見るのと一緒になっちゃうので、Twitter+αにするために書いています。

◇ ◇ ◇


『息』2020.1.15 #アトリエ部文芸展


僕に積もった埃を貴方は一息で吹き飛ばした。

散った埃のきらめきを忘れない。

薔薇色の霧で覆い隠すから、

溜息は僕の中に吹き込んでほしい。

いつか退屈で世界をむことになっても、

美酒の香りが染みたこの部屋は残しておくよ。


◇ ◇ ◇

詩コン『吹』とセットの詩です。セルフアンサー詩とでもいうんでしょうか。アトリエ部のお題を知って、これは書くしかないと思いました。

アトリエ部文芸展への参加は久々でした。暫くお休みされるそうですが、母子ともに末長く健康でいられることを願います。ご家族にも、ここを読んでくれているあなたにも幸あれ。人類みな幸せになれぇッ!!(突然のノブ)

◇ ◇ ◇


『改』2020.1.17 #詩コン


彼は彼女を助けたかっただけかもしれない

彼は彼を救いたかっただけかもしれない

彼女は彼女を嫌いではなく

彼女は彼に怒っていた


蝶々結びじゃほどけちゃうよ

ほどけたらやりなおしたらいいんだよ

めでたしめでたし

循環


どちらが正しいんですか?

ナントカ彗星があっちに

ナンチャラ隕石がそっちに

月がよかったのにという猫様の呟き


わん、two、3、肆

サヨナラ人類


◇ ◇ ◇

人類の幸せを願った頭を揺らしてサヨナラと記す。

サードインパクト。が、頭から離れなくてですね。序盤はそっちに引きずられています。どの彼が誰で、とか的確に当てはめているわけではないです。隕石のあたりは恐竜が絶滅して哺乳類が台頭するという切り替えの話です。

なんだかねぇ、最後の2行だけでよかったかもしれないなぁってねぇ。

◇ ◇ ◇


『粋』2020.1.24 #詩コン


冬の宵が窓外に満ちた

 としても

ビーカーに満ちた液体が

どれだけ真の水かなんて

僕にはわからないから

試薬でもなんでも混ぜてみればいいさって

それで不純物になってしまったって

 僕のせいじゃないさって

僕は不純異性交遊なんてしていないもの

証拠はこのスマートフォンの中に

 あるけれど

画面の白さに目が眩んじまったのさ

めくるめく めくるめ くるくる

僕だけじゃないの

客体の青が映って写ってウツ

透明じゃいられないの水が

 ぽん ぽんぽん  ぽんぽん

不自然発生のあぶく

 あわ ぶくぶく

耐えられないよガラスじゃ

漏れだす内実

苔むした底の萌芽

水腐れ

 の

 耽美


◇ ◇ ◇

なんだかよくわからないものができた……。最初の3、4行のイメージがあって、そこからなんとなくで書き上げました。このイメージで書きたいと思ったのと、カクヨムではないとこにメモしていたため確認するのが面倒だったのとで、週の序盤に書いていたメモは全て没にしました。それはどこかで形にしようと思います。

「ぽん ぽんぽん  ぽんぽん」は友人が紹介してくれた曲のテンポで、耳触りが良くて頭に残っていたのでご登場いただきました。

◇ ◇ ◇


『昧』2020.1.30 #詩コン


蒸しタオルであたためられた瞼の裏

見出だしたのはチカチカする灯り

明かり照らして前も後ろも全て


星くず達のなかに見つけた屑

本音が刻まれた骨も見せて


兎は迷子になるでしょう

白いから消えるのです


僕を抱いたままの人


透明度の低い水晶

振動する水晶体


霧の向こう側

川のこちら

灰を被る


灰しか無い


灰しか無いの

彩度零


無限の明度で照らしてほしい


霧を晴らして


◇ ◇ ◇

某ヒット作品のあるキャラをイメージしている部分もあり、全く関係ない部分もあり。立ち位置が難しい詩です。わかったのはイメソン自作できるおたくまであと1歩のところまで来ている、ということです。

チラリチラチラバラリバラリと灰が降っている情景を思い描いていたのに「降る」という言葉を入れ忘れました。勢いで仕上げるとこういうことある。無念。

◇ ◇ ◇



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