私の大好物

そよかぜ

第1話 私の大好物

あっ今日は君たちなんだ。

ようこそ!いらっしゃいませ。

さぁこのジュースでも飲みながら私の話を聞いて言ってね。


君たちの好きな食べ物はなに?

うん、うん…そっか。

いいね、みんなそれぞれが素敵なものを好んでいる。

私のね、大好物は私なんだ。

あっ、そう言っても自分を食べるわけじゃないよ?そこは安心して欲しい。

自分で自分を食べるってホラーだし‪w

ゾンビ映画とかじゃないんだからそんな事はありえない。

ただ私そっくりのクローンを食べてるだけだ。

へっ?自分そっくりのクローンなら自分を食べているのと同じだって?

あはっははは、そんな訳ないじゃん!

コレは、物だよ?おもちゃと一緒だよ?

ほら、みんなよく持ってるじゃん!

ぬいぐるみとかスマホとか色々、それと一緒だよ!

それにほら、コレ言葉も話せないんだよ?

まぁもう食べ進めちゃったから…かもしれないけど。

最初から「あ゛ぁ゛」ってうめき声しか出さなかったし。

こんなんおもちゃと一緒でしょ?

それにコレって結構普通じゃないの?

クローンを食べるの親戚一同みんなやってるけど…。

私の一族がおかしいのかな?ねぇ?どう思う?

んーまぁ、いっか。

今更食べるのやめるなんて出来ないもんね。


あれ?ちょっと!待ってよ!えっ帰るの?なんで?まだ外明るいよ?まだ話聞いて言ってよ。まだまだ続きがあるんだから。えっちょっとなんで…なんで逃げるの?帰るの?おーい!ねぇっ!ちょっと!待ってったら!ねぇっ!おいっ!待てよっ!



はぁ、あーぁ逃げちゃった。やっちゃったなぁ。いっつもこうなんだよなぁ。なんでかなぁ。なんでみんな話を最後まで聞かずに帰っちゃうのかなぁ。みんな忙しいのかなぁ。

ん?あー!まだ居てくれた!なぁんだ。

良かったぁ。

君はまだ時間大丈夫なんだね!

あっ!そうだ。

よかったら夕飯食べていかない?

食べながら話そうよ!

それならゆっくり話せるし、君も食べながらなら帰れないよね?

ね?いいでしょ?

はいっうん!けってーい!

夕飯用意しまーす。

食べてってね!


今日のごはんは…うわぁぁ地味だなぁ。

うへぇぇ。


《ホッケの塩焼き、じゃが芋の煮付け、お麩の味噌汁、炊き込みご飯》


ごめんね〜こんなご飯で。

こんな普通のご飯じゃつまらないよね。

もう!お母さんもいつもの出してくれればいいのに。なんで今日に限ってこんなの出すかなぁ。あっそうか。今日は君がいるからこんなご飯なのか。そっかそっか。ならしょうがないね。


あっそうそう。さっきの話の続きね。

食べながら聞いてよ。

私がクローンを食べてるって話はもうしたよね。そのね、クローンって生まれてすぐ作ったんだよ。私、実は生まれつき体に欠陥があったんだ。

あっそんな心配そうな顔しないで。

今は大丈夫!健康なんだけどね。

そこの部分が悪くなったり機能しなくなった時用の代替品がクローンなんだよ。

だけど私も成長して代替品が必要無くなったんだ。

だからクローンは、不要処分になったの。

んで、不要処分になったクローンはね、クローンの元の人つまり私の養分になるんだ。

それが我が一族の習わしなんだよ。

だってクローンの存在知らなかったでしょ?

それは、クローンを持っている一族がみんなそこで食して存在を抹消してるからなんだよ。

ん?クローンの食べ方?味?

あぁそっか食べたことないんだもんね。

いいよ、教えてあげる。

食べ方はねストローのようなものを使ってお腹に穴を、スプーンで頭に穴を開けて、食べるんだ。

大体食べるのは脳みそや内蔵だよ。

脳みそはね、ドロドロしてたりトロトロしてたりしてとっても美味しいんだ。そうだなぁ例えるなら…そう!生クリームみたいな感じ。

内蔵はそうだなぁ…レバーみたいにクセが強い。だけどねすっごい美味しいんだ。A5ランクのステーキって言うの?なんかそんな感じ。ってA5ランクのステーキ食べたことないんだけどね‪wだけどね、そんくらい貴重で美味しいんだよ!

だって内蔵食べすぎたらすぐクローンの中身なんて無くなっちゃうでしょ?だから滅多には食べれないの。だいたい年に数回食べれるかな〜って感じ。

でね、ぜい肉や頭蓋骨も食べれるけど油っこいし、硬いし私は好きじゃない。

うなぎの骨みたいにボリボリ食べれないしね‪w

それにぜい肉は油こくってブヨブヨしてて美味しくないんだ。


あっ!別にね私、この世にある食べ物はだいたい食べれるんだよ。ほら、今日の夕飯も普通でしょ?こういうのも食べれるんだよ。

だから私は普通の人と一緒だよ。君と一緒だ。

だから決して私はおかしくなんてない。正常なんだよ。

だよね?ね?私、普通だよね?

え…ちょっとなに?なんでそんな怯えてるような顔してるの?

え…ちょっとねぇ?

逃げないでよ…?まだ話は終わってないんだから。


あっ!それにほら!デザートもあるからさ!

餡蜜あんみつ好き?

ほらほら!食べてってよ。

もうすぐ話も終わるからさ。


別にね、クローンを食べなくても、ここ日本は恵まれていて食べ物がありふれている。

だけれど私はワタシを食べる。

だってワタシを食べるのは特別楽しいことだから。

ワタシっていくら食べても太らないんだよ!

なのにお腹いっぱいになれるんだ。

だって食べてるのは自分…ワタシなんだから当たり前だよね!

これが1番の魅力だ。

それに、ワタシは、焼く必要は無いんだよ。

生のまま、そのまま食べられるんだ。

今どき生のまま食べれる肉なんて、そうは無いはずだ。

調理の必要なし!

これ程完璧な食材はないと思う。


クローンを食べるなんて…って思う人が大半だろう。

だけどワタシを食べるっていいことなんだよ!

ベジタリアンの人もビーガンの人も関係なくお肉が食べれる!

だって自分なんだから。

自分の体は、自分の食べたもので形成されるんだから他の食べ物に注意しとけば、ワタシは食べても大丈夫!

動物愛護法にだって違反しない。

だって動物は殺してないんだから。

共食いにだってならない。

だってワタシなんだから。

自分の体の1部をちょっと食べてるだけで、私は死んでないんだから。

ワタシを食べているだけなんだから。

何一つ命は奪っていない。


ワタシを食べることで他の食べ物を食べる事が少なくなるなるから私は、むしろ食肉動物達を救っているんじゃない?

そうだ!そうだ!

絶対そうだ。

私は食肉動物達を救っているんだ。

私ったら偉いなぁ。

ね?偉いでしょ!

ほらすごーぃって言っていいよ!

ね?!言いなよ!



それにね、イライラした時もワタシの体を食べればひとつまたひとつと、イライラが消えていってスカッとする!

リスカする必要もなし!

誰も傷つかない!

しかも満腹感も得られる!

こんなに人に迷惑をかけない完璧なストレス発散方法って他にないでしょ?



ワタシを食べるってこんなにいいことづくしなんだよ!悪いことは無し!

どう?君も食べてみない?

食べたらきっと止めれなくなるよ!

私と一緒に自給自足ライフを送ろうよ!


私はクローンを食べ始めて、5年…。

今のクローンは脳みそが普通の人の半分の量しかないし、胃も食べちゃったから食べ物を入れとくところが無くなって、体重も25㌔しかなくなっちゃった。

もうコレ、ダメだね。

いよいよ家族にも心配されてきた。

次のクローンを作ろうって。

だけどね、私このクローンが大好きなんだ。

美味しいし、言うこと聞くしまぁもう声も聞こえないんだけど…。

私とワタシは心が通じあっているんだよ!

だって私とワタシは一心同体なんだから。

このクローンはよく不気味がられるし、心配される。

私のことだって正直引いたでしょ?

だってほら、今だって引き腰じゃん。

顔も引き攣ってるし、ガクガク震えてる。

君のお友達だって君を置いて逃げちゃったじゃないか。

やっぱりね、みんな引くよね。

こんな私…。


だけど気にしない。

だってワタシを食べることは止めれないもん!

スタイルも良くなったしいい感じ!


ワタシを食べることを止めるくらいなら将来も友達も信用もみんな要らない。何もいらない。

1人で生きていく。

幸いここで生きていけば我が一族には理解得られるしね。


私は、今凄い幸せ。

この幸せを奪う者が現れたらそれが誰だって許さない。

私の幸せを奪うな。

私の幸せを奪う者は誰だろうと消してやる。

そのためにもう3人は消したもん。

…ん?

あぁ気づいちゃった?

そうだよ。

3人って君の友達のことだよ。

だってねぇ?私の話も聞かずに飛び出しちゃう人なんて要らないでしょ?

ね?だからさ、そんな怯えた顔しないでよ!

ねぇ!


ん、じょーず。

よく出来ました〜。パチパチパチ(拍手)


これからね、こんな私の話を聞いてくれない人がいくら増えようたって変わらない。

私の幸せを奪う者は消してやる。

だって私はストレスフリーになれたんだもん。

ストレスフリーだと、この世が輝いて見えるんだよ。

あーワタシを食べる選択肢を選んで本当に良かった。




どうだった?私の話は。

あはははっそんなビビらないでよ。

作り話に決まってるでしょ。

私、将来小説家になりたいんだ。

どう?話、面白かった?

……

ほんと?!よかったぁ。

これで元気が出るよ。



ん?えっ?もう帰るの?

あ、あぁまぁもう外暗いもんね。そっか…。

ん、分かった。


君も私から逃げるんだ…。そっか。


逃げないでよ?ね?君も、もうコッチの人間だよ。

最後まで話聞いたんだから。

でも君には、選択肢をあげる。

きみの友だちのようになるか、それとも…


…そっか。友達のようにはなりたくないか。

分かった。良かった。

んじゃぁ、ほら舌を出して。

さぁクローンを作ろうじゃないか。



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