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  Ms.アレクシアのオカルト探偵室

○都市伝説ファイルNo.523/ピュティアの子孫 New!


 黄泉の国へ死んだ妻を迎えに行くも手遅れになる物語、弟の乱暴で重要な女神が隠れてしまい地上が荒廃する物語、不機嫌になった女神を女が裸踊りで元気づける物語。これらは、日本神話とギリシャ神話の双方にあるエピソードだ。

 二つの神話にはこうした奇妙な類似がいくつもある。一説では、かつてユーラシア大陸を広く支配したスキタイ人が、ギリシャの文化を日本に伝えたためだともされる。


 ここに、もう一つの伝説も生じるのだ。それは、昔ギリシャのデルフォイにいて神託を授かった、ピュティアなる巫女にまつわる物語である。

 当初彼女たちは、十五歳ほどの処女たちで構成されたという。

 地球が母なる大地に例えられるように、世界中の神話では生む性である女性が神秘視され主神とされることが目立つ。また子供も、世界的に純粋無垢さから霊感に優れているとされ、幼さから誕生前の現世でない世界に近いと目されてきた。従って、女にして子供たる少女は最も霊感の強い人とされてきたらしく、どこにおいてもおよそ神と人とを仲介する巫女の役割は少女が務めることが多かったのだ。


 ピュティアも例外でないわけだが、あるときこの少女巫女が誘拐され犯されてからは、神託を受ける役割は老女に移ったという。

 もう一つの伝承はここから始まる。

 結局、老女では向かなかったのか、やがてピュティアそのものが衰退していくことになった。神託の場が改装を重ねた結果、危険な神と通じるようになったために封印されたともいわれる。いずれにせよ、問題は最後の少女巫女となったピュティアの行方だ。

 彼女は特に才能があったらしく、犯されたのもそれによる神秘的な魅力に溢れすぎていたせいだったとの推測まである。そう、ギリシャ神話で神々が度々人間の女性との間に子をなそうとした行為が、この時代にも行われたのではないかと。


 ともあれ、先の事件により失職した最後の少女ピュティアは、まもなくデルフォイを離れたとされる。そして、大陸をも横断したというスキタイ人に嫁いだという。彼女の子孫は、類稀なるピュティアとしての神託を受ける才能が隔世遺伝のように時たま開花し、とてつもない預言者になるそうだ。

 もしかしたら、古の偉大なピュティアの血を引く子孫が、スキタイ人を通じて現代のギリシャから日本辺りまでのどこかにまだ生きているのかもしれない。

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