高校生カップルはかく語りき1

「凄いねーまんちゃん。痴漢なんて怖くて嫌だよ」


「あれはK西谷直伝なのだ。K西谷はあれのお兄ちゃんバージョンで数々の痴漢を撃退しているのだ。どうやら高校の時にそういう遊びが流行っていたらしいのだ」


 どんな遊びだよ!


 舞ちゃんは思わず心の中でツッコミを入れた。


「でも愚集は言い過ぎなのだ……」


 はぁすみません。


「あそこで気付いていてものっぴきならない理由があって動けなかった人もいるかもしれないぞ!文章を面白くしようとするあまりディスりに走るのはよくないのだ」


 ごめんなさい。


「まんちゃん誰と話してるの?」


「どうでもいいことなのだ」



 暫く歩くと巨大な大学の校舎が見えてきた。


 街中に建てられた大学なので面積は広くないが縦にでかい。


「なるほど!此処が性の花園!大学か!」


「まんちゃん意味理解してるの?」


「西谷がそう言ってたのだ」


 万四郎は両手を広げるとあ◯れちゃん走りでプゥーンと口で叫びながら大学に飛び込んでいった。


 しかし暫く進んだところでピタリととまる。


「どうしたのー?まんちゃん?」


「どうも乳臭い匂いがするぞ」


 クンクンと鼻を動かす。


 そして大学内のカフェに座っている男女のペアを見つけると再びあ◯れちゃん走りで走って行った。


「待ってよーまんちゃん」



 裕也と紗奈は高校生だ。しかし今日は私服に着替えて一足先に大人の雰囲気を味わうために大学にデートに来ていた。


 予定していたデートコースを予定通りに周りそれはそれは楽しいキラキラとしたK西谷が見れば全身の毛穴という毛穴に爪楊枝を刺しそうな充実したデートを行なっていた。


 しかし、事件は大学内のスーパーバックスコーヒーに入ってコーヒーを飲んでいた時に起こった。


「ちょっと大人の気分になれたね?裕也くん」


「そうだな紗奈」


「ぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!」


 不意に窓側の入り口から一人の女の子が飛び込んできた。


 真っ黒な長い黒髪に小さな身長。ぱっちりとした目の下には若干クマができている。


 その少女は二人のテーブルの横に来ると順番に顔を眺め叫んだ。


「お前たちー!膜と皮はまだ保有しているのか!」


 裕也より先に理解した紗奈の顔が真っ赤になる。裕也はそれよりも見た目と声とのギャップに驚いていた。


「ちょっと!なんでさっきまで痴漢と戦ってた人がナチュラルにセクハラして加害者側に回ってるの!」


 後ろからゆるふわ系の超可愛い人がその黒髪の少女を抱き上げる。


「か、可愛い。大学生だ」


 思わず紗奈の口から言葉が漏れる。


 舞ちゃんはふんわりとわたがしの様な笑顔を浮かべてありがとうと言った。


「む!はなすのだ!はなすのだ!さぁ早く!」


 万四郎はもがもがと舞ちゃんの腕の中で必死にもがく。


「だってまんちゃんまたセクハラするでしょう!」


「これは取材なのだ!恋愛小説を書くために必要な行為なのだ!」


「取材でもダメなの!」


「では童貞、又は処女の官能小説作家やエロ漫画家は行為を百%妄想で書かなければならないのか?風俗では得られない純愛的な過程においての喪失を知るには取材しか手段がないではないか!」


「官能小説作家やエロ漫画家に処女や童貞の人なんていないんだよ!多分……」


「舞ちゃん!決めつけるのはよくないのだ!いるかもしれないのだ!」


「そうですね……ごめんなさい……」


 舞ちゃんはショボーンとして万四郎を地面に下ろす。


 可愛いお姉さん負けちゃった……。

 ちっちゃいほうが勝っちゃったよ……。


 二人は心の中で呟いた。


 万四郎は手首を腰にあてふんぞり変える様に二人を見つめる。


「それでは言い方を変えて。高校生!君たちは今愛し合っているのか?それはどのような手順を経てそうなったんだ?教えてくれ!」


 裕也はポカーンと口を開けた。


「えーと」

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米田万四郎はかく語りき ムッシュルムッシュル @Minosenoisekai

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