釈迦のごとく

 『悪人正機とはよういうたもんや。ワシはアホやからこそ人間が愛おしゅうてたまらん』……『センゴク(宮下英樹、講談社、敬称略)』にて本願寺顕如の述べた台詞である。
 翻って本作、作者の主人公に対する視点はあたかも釈迦がカンダタを眺めるがごとき美しさと恐ろしさを感じる。いや、主人公は別に悪人ではないのだが、作中描かれるある種の愚かしさについては共通する要素を感じ取った。
 蜘蛛の糸を登ったかに思える主人公に対する彼女の台詞は、まさに『審判』であろう。
 必読本作。

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