春銀花



いつまでも鳴らない通知音

君と交わした言葉を

何度も読み返しながら

冷たい画面に指先を滑らせる


君の声が聴きたい

君に会いたい


言えば困らせるのが分かっていたから

胸の奥底に仕舞いこんで

そっと目を閉じた


でも気持ちが降り積もれば積もるほど

どんどん切なくなって

どんどん苦しくなって


こんなにも君を好きで辛いのに

君は今どこかで誰かと笑ってるのかな

そう考えたら悲しくて


いつからか耐えきれなくなって

泣きじゃくりながら

繋いでいた手を離してしまった


寂しげな君の笑顔が忘れられない

絞り出した“ごめん”は少し震えて

君に伸ばしかけてた手を握りしめて

霞む背中を見送った


ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい


とめどなく溢れる涙は

雨となり 雪となって

静かに降り積もっていく

世界を銀色に輝かせながら



モノクロの街で

友達と歩く君を見つけた

久しぶりに見た横顔

それだけで言葉に詰まって


茶化す友達を困った顔で怒る君

二人で歩む未来のために

無理をしていたという君

強くて 優しい

私が好きになった人


胸の奥で降り積もっていた雪が

雨になり 川になって

溢れ出した


慌てる君の大きな手が背中をさすると

涙はもっともっと止まらなくなって


“今でも好きです”

そう伝えたら

君は勝手だって怒るかな?


“ 今後は二人で一緒に歩きたい”

そう伝えたら

君は困ってしまうかな?


楽しいことも 悲しいことも

幸福も 苦労も

二人で分け合いたい

一人きりでは寂しいから


雪解け水はしばらく止まりそうもないよ

君のてのひらが

春の木漏れ日のように優しいから


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