第17話 女子会?①

――そのままリビングまで連行され、両脇に夢と音筆が座る形でソファーに腰を落ち着かせる事となった。その正面のソファーには空乃が座っている。


「さーて、飲みなおすわよ~」

と音筆。黒縁の眼鏡は先程からかけたままだ。


「夢も今夜はとことん飲むよ~」


「はいはい、アンタはジュースね」


「それは酷いよ琴ちん~」


「皆さんはゆっくりしていてくださいね。私は少しだけ片しちゃいますから」


「私も手伝うわよ」


「大丈夫ですから、琴乃ちゃんは目依斗さんを見張っててくださいね」


見張っててって……。

僕は犬かよ。


「ありがとね、分かったわ」


「あっ、夢もちょっと準備してくる」

そう言って夢も出て行った。


ふむ。


「よし、僕ちょっとトイレ!」

すかさずスッと立ち上がる。


「駄目よ」


再び僕の右腕を組まれ、その場にドスンと腰を落とす。

今日これ何度目だよ。


「トイレはいいだろ!」


「逃げないでちゃんと戻ってくるならいいわよ」


「あ、なんか尿意去っていったかも。後にしとこうかな」


「あら、そう」


ばれていた。


「はい、二人共どうぞ」

空乃が氷と酒を入れてあるグラスを僕らに差し出す。


「ありがとう~、空乃」


「ありがとな」


「いーえ」

そう言うと台所に戻っていった。


最近またよく思い出す。

と言われると複雑な気持ちになる。


「ほら、飲みましょ?」


「ああ……」


「どうかした?」


「いや、何でもない」


「ふーん」


「お前、結構飲んでるみたいだけど大丈夫なの?」


「今日は平気みたい。まだまだ飲めるわよ!」


「そうかい、まぁ無理しないようにな」


「ありがと。アンタは大丈夫?」


「おう、僕もまだまだ大丈夫だな」


「アンタも無理しないようにね」


「うん、ありがとう」


「ところでさ、女子会なら本当に僕抜きの方がいいんじゃないか?女子だけで積もる話もあるだろうし」


「そういうのは寝る前にでも出来るからいいのよ。明日も休みだし」


「そういうもんかねぇ」

と酒を飲む。


「まっ、女子会に参加できるなんて本来ない事なんだから光栄に思いなさい」


「そりゃ、どーも」

願わくば参加したくはないんだけど。


「それはそうと、アンタあのゲーム強いのね」


「ん?ああ、さっきも言ったけどだいぶやり込んだからな」


「お前こそ強いんだろ?今度また酔ってない時にでもやってみる?」


「そうね、やってみてもいいかも」


「というか眼鏡かけるんだな」


「そこまで悪くはないんだけどね。夜とか暗くなるとたまに使ってるわ」


「へぇー、似合ってんな」


「そう?」


「うん、眼鏡女子だな」


「何よそれ」


「いやいや、結構好きな男多いよ」


「そうなんだ。アンタは?」


「僕も好きだよ」


「私もかけてた方がいいかな?」


「いや、普段かけていないのにたまにかけるからこそ、いいものだと僕は思う。男はギャップに弱いから」


「なるほどね。でもそれなら女性もギャップには弱いわよ」


「あー、そうか。じゃあ人間皆ギャップには弱いのかもな」


「そうかもね」

と二人で笑う。


「アンタもちょっとかけてみてよ」

そう言って自分の眼鏡を取り外し、僕に手渡す。


「別にいいけど」

手渡された眼鏡をかけてみる。


「どうかな?」

かけたことないから少し照れくさい。


「……」

何も言わず僕の方を見ている音筆。


「いや、何か言ってくれよ!やっぱ変かな?」


「……ギャップね」


「良いと思うわメガネ男子」


「何だよそれ」

思わず笑ってしまう。



「うわ!目依斗が眼鏡かけてるー!なんか新鮮だね!」

バッグを持って夢が戻ってきた。


片付けが落ち着いたのか、空乃もまた二つグラスを持って戻ってきた。

「本当ですね。似合ってますよ」

そう言って、自分と夢の前のテーブルにグラスを置いた。


そして「じゃあ乾杯しましょっか」と続けた。


それを聞いて夢が音頭を取る。

「ではでは、改めまして~かんぱ~い!」


『かんぱ~い』


「んでんで、何してたの~」

と夢。


「ああ、ギャップについて話しててさ。そんで僕も音筆の眼鏡借りてかけてたとこ」


「やっぱりギャップっていいですよねー」


「うんうん、ドキッとするよね」


「やっぱ夢と空乃もそうなんだ」


「そうですね。その人のいつもと違う面を見れるっていうのがまたいいですもん」


「ほらね~」

と音筆。


「男だけかと思ってたわ。あ、はい。ありがとな音筆」

眼鏡を外して音筆に返した。


「別にまだかけててもいいのに」

と、自分にかけ直す。


「よーし!こうなったら、ギャップバトルをしようじゃないか~!」夢がまたよく分からん事を言い出した。


「何だよそれ」


聞く耳を持たず勝手に説明を始めた。

「ルールは簡単!ゲームをして負けたら普段とは違う姿になる!以上!」


「本当に簡単だ!というかルールという程でもない!単なる罰ゲームじゃねーか!」


「まぁ、そういう事だね~」


「いいじゃない、面白そうだわ」


「でも、ゲームってさっきのですか?」


「ノンノン」

チッチと人差し指を横に振る夢。


「お泊まり会にはゲームが付きものだからね!こんな事もあろうかと夢ちゃんが色々用意してきました!」ジャーンと持ってきたバッグの中から色々な遊び道具を取り出した。


「こんなに持ってきてたのかよ!」

修学旅行に持っていくより多いわ!


というかテンション高いな。

お泊りとお酒の匂いでハイになってんなコイツ。


「それではまず第一回戦!」


「ババ抜き対決!」


定番中の定番から攻めてきたな。

いいだろう、やるからには勝つ!



――こうしてギャップバトルという謎のゲームが始まった。

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