第4話 帰省と謎

俺たちは今おじいちゃん家の近くまだ来た。目の前には瓦礫の山が広がっていて足場も少ない。進んでいるとアスレチックをしているような感覚になる。


「こっちで合ってんのか?」

「ああ。多分な。ってうお!?」


いきなり後ろから押し倒された。どうやら茜が転んだようだ。背中に柔らかい感触があるのですぐに分かった。


「大丈夫か?」

「え、ええ。その、」

「ん?」

「あ、ありがと…」

「どういたしまして。そろそろ退いてくれ。いつまで押し倒すつもりだ?」

「あ・・・」


茜は慌てたように飛び退いた。


「翔太。大丈夫か?潰されてないか?」

「何よ。私が重いっていうの!?」

「いや。そんなつもりは・・・ほら、ちょっと茜はえーとアレがな?」


明は茜の胸が大きいことを言いたいんだろう。明の視線は思いっきり茜の胸に向いている。もちろん茜がその視線に気付かないはずもなく、


「どこ見てんのよ!馬鹿ー!」


次の瞬間、快音が響いた。茜は顔をリンゴのように真っ赤にして肩で息をしている。


「痛ってえ!何すんだよ!?」

「やめろ明!今のはお前が悪い。別に俺は潰されてないし大丈夫だ。ほら、行くぞ。」


俺は目の前の角材を跨ぎながら、明をひっぱってやった。




「うわ・・・」


俺はおじいちゃん家の前に着いた。とはいっても、もう家の形はとどめておらず他と同じく瓦礫の山と化している。


「これは思ったより酷いわね。」

「お兄ちゃん。おじいちゃんは?」

「とりあえず手分けして探そう。何かあったら知らせてくれ。」

「よし!わかった。俺はこっちを探してくる。」


俺たちはバラけておじいちゃんを探し始めた。誰ももうおじいちゃんは死んでしまっているしもしかしたらここにはいない、なんてことは口にしなかった。




「じいちゃーん!生きてたら返事してくれー!」


俺は喉が枯れるぐらい叫んだ。しかし返事はない。しばらく歩くとちょうど半分は建ったまま、半分を壊された見覚えのある家があった。


「なんだよ。ここか。」


そう。この大きな家がじいちゃん家だ。俺は残ってる家の中に入る。しかしそこにも瓦礫が入ってきており足場はほぼない。しばらく探していると、どこからかくぐもった呻き声のようなものが聞こえた。


「じいちゃん!?」


じいちゃんが生きている!?と思った俺は手当たり次第に瓦礫を持ち上げて探し回った。やっぱり瓦礫が軽く感じる。おかしいな。


「ああ!?」


そこには血を流して死んでいるペットの梅吉の姿があった。よく俺に懐き一緒に遊んだりもした可愛い犬だ。


「梅吉ィ…」


涙を流しながら梅吉を無事だった机の上に置く。俺はじいちゃんを探し始めた。




どれくらい探しただろうか、しかし、じいちゃんはどこにもいなかった。気がつけば明達も来ており、手伝ってくれたが成果は上がらない。


「本当にここなのか?」

「もちろん。自分の家族の家を間違えはしないさ。」

「別のところにいるんじゃないかしら。」

「かもな。」


俺たちが諦めかけたその時、前よりも明瞭に ガタガタッ って音と呻き声が聞こえた。


「今のは!?」

「こっちだ!」


俺たちは音がした地点の瓦礫をかき分ける。しかし何も出てこない。


「確かにここから音がしたんだけどなあ。」

「なんだったのかしら?」


すると俺の足元がガタガタと揺れた。


「うお!」


慌てて飛び退いてその場所を良く見ると何か取手のようなものがある。


「おい明!こっち!」

「なんだ?。」

「これ!地下通路じゃね?」

「確かに。開けてみようぜ。」


明が無用心に近づいて開けたその時、扉の方から開き、明の顔に直撃した。


「ウボァ!」

「明!?」


明は後ろ向きに倒れる。鼻血が出ていたのでティッシュを渡していると聞き覚えのある、いや、聞きたかった声が聞こえた。


「ゲホッ!ゲホッ!死ぬかと思ったわい…」

「この声は、じいちゃん!生きてたのか!」

「翔太か!」


じいちゃんは今年で74になる。しかしビンビンしていて、まったく年老いてるようには見えない。じいちゃんは俺に近づくと俺の頬を思いっきり殴った。


「じいちゃん!?」

「この馬鹿者!なぜ来た!」

「じいちゃんが心配で…」

「儂はこの程度では死なん!」


なんでじいちゃんが怒ってるのか分からない。


「翔太はじいさんのことを思って来たんですよ!なのにその言い方はないでしょう!」


復活した明が俺に加勢してくれる。しかしじいちゃんはさらに怒り出した。


「なに!翔太!おまえ、明と茜まで連れてきたのか!この大馬鹿者が!」


駄目だ。なんで怒ってるかさっぱり分からん。


「俺たちが来ちゃ悪いのかよ!」

「別にお前らは悪くないわい。悪いのは翔太、お前だ!」

「なあ、じいちゃん。」

「なんじゃ!」

「なんで怒ってるんだよ。俺はじいちゃんを助けに…」

「儂が怒っとる理由が分からんのか!」

「はい。」

「そうか…翔太はいつもそうじゃったの…」


じいちゃんは泣き出してしまった。なんで泣いてるか分からない。


「翔太。」

「何?」

「多分、お爺さんは翔太を心配してたのよ。自分を助けに来て、もし翔太が死んだらどうする、って言いたかったんじゃないかしら。」


そういうことか。明たちを見て怒ったのは友達を危険に巻き込んだから怒ったのか。


「じいちゃん。ごめん。」

「分かればいい。って言っても翔太はまたこういうことがあったら駆けつけるんじゃろう。」

「アハハ…」


すると近くで地響きが聞こえた。


「また来おったわい。」

「またってどういうこと!?」

「クリムゾンベアーの奴はさっきからここら辺を行ったり来たりしてるんじゃ。何が目当てかなんて分からんがの。」

「どうすんだよ翔太!」

「安心せい。ここに入れば大丈夫じゃ。」


じいちゃんはさっき出てきた所を指さした。


「この中はいわゆる秘密基地ってやつでの、誰も知らんわい。」

「秘密基地!」

「よし。行こう。」


俺たちはじいちゃんを先頭に基地に入っていった。



「ここじゃ。」

「すげぇ!広いなあ!」

「いやこれは駄目だろ。」

「明らかに隣の家の敷地まで入ってるわよね。」


秘密基地は家の敷地約4個分ぐらいあり、中には冷蔵庫、テレビなどの家具やベッドなどの寝具を完備しており、生活感あふれる空間だ。しかしその中に異様なものがあった。


「これはもっと駄目だろ。」


そう。大量の銃火器が置いてあったのだ。ピストルやライフル、狙撃銃などさまざまなラインナップだ。その隣には槍や刀なども並んでいる。


「すげぇ!これ全部本物?」

「そうじゃよ。」

「銃刀法違反よね。警察に突き出した方がいいかしら。」

「それはやめてくれ。俺の経歴に傷がつく。」

「しー。」

「しー、じゃないだろじいちゃん。」

「これくらい普通じゃよ。あっちの奥には戦車もあるぞ。」

「戦車ァ!?」

「すげぇよ!何の戦車ですか?」

「第二次大戦時のドイツ軍の主力戦車、Ⅳ号戦車じゃ!」

「見てもいいですか?」

「おう。こっちじゃ。」


明とじいちゃんは奥へと歩いていった。


「なあ茜。」

「センシャ?洗車?わーい車だぁー。」


駄目だ。茜が現実逃避して壊れた。明はじいちゃんと一緒に奥へ行ったし、あとは美菜か。さっきから一言も喋ってないし、さっきの死体でショックを受けたのか。それとも疲れただけなのか。


「なあ美菜。」


しかし返事はない。


「なんだ、こんな時にかくれんぼ気分かよ。元気じゃねえか。」


辺りを見回すと美菜が隠れられる所は限られている。俺はため息を吐きながら探した。しかしどこにも美菜はいなかった。


「おいおい。マジかよ!クソッ!」

「どうしたのよ。」

「美菜がいない。」

「えぇ!どこに行ったのよ!」

「多分まだ地上で俺たちを探してる。」

「どうすんのよ。」

「助けに行くに決まってるだろ。茜、お前はここにいろ。それでこのことをじいちゃん達が戻ってきたら伝えてくれ。」

「1人で行く気!?」

「ああ。」

「ちょっと翔太!…


俺は止める茜を無視して武器の山の中からアサルトライフルとハンドガン、それとナイフを取り出し、充分な弾薬も持つ。


「じゃあちょっくら行ってくる。」


俺は基地を飛び出した。







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異世界日本紀(仮) 駐車場の野良猫 @Orichalcum

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