第3話 私の見ているものは

「という夢を見たのよ」


 日曜のお昼前、駅の南口から少し歩いた所の三階のカフェ。まんまるのテーブルは品の良い木目で、真っ白で統一されたシンプルなチェアやスツールとの対比が際立っている。店内はまだポツポツと空席があって、早めに待ち合わせてブランチと洒落込んだ私達の食事はほとんど終わっていた。

 

 

「で、買い物に行きたいと?」


「そういう訳じゃないんだけどさ」


「じゃ、行かない?」


「いや行く」


 でしょうね。と奈津子が意地悪く言った。奈津子は中学の同級生で最近よくでかけたりする。この年にもなるとママになったりとか、気軽に遊びに行くなんてことが出来る相手も少しばかり減ってきたりする。

 焦ってるわけでも無いし、かといって何もしてないわけでもないと、私達はお互いともに良くも悪くも恋愛とか結婚にどっしり構えている。


 でも、友人の結婚式に出席するたび、なにかが背後から忍び寄ってくるような感覚に襲われる。それが焦りなのかもしれないけど、そう認めたくないだけでそう感じるのかもしれない。


「服を選ぶって夢占いでは、新しいことに迷ってるって意味らしい」


 奈津子が言った、最近奈津子は夢占いなんかに凝っていて、私の夢についても診断しようとしていた。


「ふーん」


「で、黒い服は良くないことの暗示だって」


「ちょっと、もう。せっかく楽しいショッピングの夢を見てから、ちょっと合コンでもってやる気が出てきたのに、やる気なくなるじゃない」


「ごめん、ごめん。次の相手はたぶんいい感じだからさ」


「それ、あてにならないのよねぇ……でも前向きに考えとくから」


 私は純白のコーヒカップの取ってだけ一筋金色のはいったシンプルな形が気に入っていて、最後の一口が喉を通った後、それをカチャと小さな音をたててソーサーの上に置いた。


「そろそろ行こうか」


 そう言ってショップへ向かう。

 

 見た目って大事。今、目先のことを言えば合コンへ行くときに着るかもしれない服を買うってことかもしれないけど、そうじゃない。


 内面が大事だと思う。でもそれは見た目をおろそかにしていい理由になどならない。

 私の外面は、私が一つずつ選択した結果の現れだ。メイクも、髪形も、服装もちゃんと整えている。それで無理をしないこと。

 無理して外面だけ整えていても、わかる人にはすぐわかる。

 

 もちろん他人のことで、絶対にそとづらだけに騙されない自信なんてない。

 騙されて痛い目にあったこともそりゃあるけど、そう気がつくときは、その人の内面が解るときなんじゃないだろうか。


 でもそんな難しいことはいいから、好きなものを選んで、買い物を楽しむことが一番。


 

 

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人は嘘をつくものなんですよ 小万坂 前志 @kamattisan

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