第7話 仲間

 僕は晴れて正式な冒険者になった証である手帳を手にしていた。手帳には僕の冒険者としての情報が記されている。

 冒険者としての仕事をすれば、手帳には様々な情報が書き込まれていくそうだ。


 僕はとりあえず手帳を無くさないようにしようと心掛けながら、ギルドの広間にある大きな掲示板を眺める。

 掲示板には冒険者としての仕事を紹介する紙がたくさん張り出されていた。


 僕はどんな仕事なら自分でもできるだろうかと思いながら、掲示板の紙をまじまじと見る。

 すると、いきなり横合いから声を掛けられた。


「よっ、新米!」


 そう言ったのは、ガッチリとした体格をした青年だった。

 体にはいかにも戦士風の鎧が身に付けられており、また腰からは大きな大剣が下げられていた。

 でも、顔の方はまだ本当の大人にはなりきれていない感じを覗かせている。


 ま、僕の世界だったら大学生くらいの青年だろう。


「は、はあ」


 僕はどう反応して良いのか分からず、間の抜けた声を上げてしまった。


「お前、まだ冒険者になったばかりだろ。その様子だと仲間とかいないんじゃないのか?」


 青年の言葉に僕は恥ずかしそうな顔をする。


「そうですけど、何で僕が冒険者になったばっかりだって分かるんですか?」


 そこは気になった。


「さっき、受付のカウンターで冒険者手帳を渡されているのを見たんだ」


「そうですか」


 豪快な立ち振る舞いをしているけど、なかなか鋭いところもあるんだな。


「俺の名前はアッシュ。こう見えて、まだ駆け出しの冒険者だ」


 アッシュは人の良さそうな笑みを浮かべた。


「僕は木崎裕也です」


「キザキ・ユウヤか。変わった名前だな」


「この国の人間ではないもので」


 まあ、この国どころかこの世界の人間ですらないんだけど。でも、相手は会ったばかりの人だし余計なことは口にしないに限る。


「そうか。まあ、名前なんてモンはどうでも良いんだ。それよりも、ユウヤ。お前、俺たちの仲間にならないか?」


「仲間ですか?」


「そうだよ。冒険者になったばかりなら、色々と教えてもらいたいことがあるはずだろ」


「はい」


 確かに、僕の知らないことは多い。それを親切に教えてもらえるのであれば、損はないだろう。


 でも、人の親切には裏があることが多いし、旨い話には気を付けないようにしないと。


 ましてや、ここは平和な日本ではない異世界なんだし。


「なら、とりあえず俺たちの仲間になってみろよ。悪いようにはしないぜ」


「分かりました…」


 僕は少し心配になったが渡りに船だと思い、そう返事をしていた。

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