第5話 邪竜

 僕はとりあえず歓楽街以外の面白そうな場所に足を向けることにする。


 異世界って言ったら、やっぱり冒険だからな。そして、冒険と来れば冒険者たちが集まるギルドだ。


 この世界を存分に楽しもうと思ったら、どうしたってお金が必要だし、なら冒険者にでもなって稼ぐしかないだろう。


 よし、そうと決まれば、さっそくギルドのある場所に向かうぞ。


 マギアスの書が正しければ、小規模なギルドなら誰でも登録できて、仕事も斡旋してもらえるみたいだし。


 そう思った僕は、頭に叩き込んであるこの王都アルサスの地図を思い浮かべながら意気揚々と歩いて行く。

 が、その途中で大きな悲鳴のようなものが聞こえて来る。


 声がした方向に目を向けると、そこには赤色の巨大なドラゴンがいて、馬車の馬にかぶり付いていた。


 すぐに馬は頭を噛み千切られて、見るも無残な屍へと変わる。それを見た僕は体に戦慄のようなものが走った。


 これが平和な日本とは違うことなんだと実感したし。


 この世界での死は現実の死に直結するに違いない。


 なら、安易な気持ちで冒険をしてみようなんて思ったらいけないのかもしれない。


 そんなことを考えていると、赤色のドラゴンは残っていた馬の死体を丸飲みにしてから、大きく翼をはばたかせる。


 そして、大空の彼方へと消えて行った。


 僕はたぶんあれが邪竜アルゲイナスなんだなと確信する。


 いつもは天空都市アルセナシアの周りを飛んでいるけど、時々、地上に降りて来て食欲を満たす。


 もっとも、アルゲイナスは人間を襲うことはないって言われているけど。


 少々、怖くなってしまった僕だけど、冒険をするかどうかは別にしてもとりあえずギルドにだけは行ってみようと思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る