たった一行だけの地獄の片鱗

合唱コンクールの練習の思い出と、当時の顔ぶれと再会する日のお話。
面白かったです。きっと誰もが通り過ぎたであろう日々、懐かしく他愛もないあの日常の、その裏や片隅に間違いなくあったはずの〝それ〟。
驚きました。この短さとこの読み心地でこんな重たい地獄の題材をぶち込んで、そのうえ完全解決してしまう、そんな話はこれまで読んだことがありません。
すごいです。不穏なのに不快じゃありません。絶望があるのに読むのが辛くない。たった数行で地獄を作り、でも地獄があることを示すのみで決して深入りはさせず、あげく最後には完璧に打ち倒してみせる。結末まで読み切った瞬間の、この目の前が拓けていくかのような心地よさ。
最高でした。とても気持ちの良い、どこまでも優しい物語だと思います。

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