可愛さの暴力と可愛さに擬態した暴力

一見すると抑制された筆致が、逆に暴虐なまでの可愛さで容赦なく読者を殴りつける文体で、モモちゃん登場シーンからのシークエンスは特に無慈悲なまでにそんな感じでした。しかし、それら淡々と可愛さで読者を残虐する序盤が、まさが死角からのフィニッシュブロウを放つための助走だとは、誰が思っただろうか?
僕が特筆したいのは、何気ない朝ご飯の習慣やスマホ嫌いというキャラ付けが、序盤では違和感なく年頃の女の子と習性として描かれている点で、モモちゃんと再会するまでに流れた三年という時間の重さを、すこぶる軽い筆致で描ききってしまったやばさですね。切り返しの巧妙さは間違いなくあるのだけれども、ひとたび切り返えされてその背景にある重厚な事情が明らかになっても、序盤に描かれた軽妙さが一切損なわれないという奇跡ですよ。

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