[2] 自決
ドイツ軍は
4月30日午前6時、第3打撃軍の第150狙撃師団が攻撃を開始した。最初に1個中隊が出撃したが、従軍特派員は「50メートルも進まぬ内に敵の疾風射を食らって地面に釘付けにされた」と記している。
まもなくかなり兵員が減った2個大隊が前進したが、多くの戦死者を出した。守備隊はケーニヒスプラッツ西側のクロール・オペラハウスや
第150狙撃師団は午前11時を少し回った頃に満水したトンネルに到達した。2時間後に攻撃を再開したが、今度は真後ろから猛火を浴びた。2キロ離れた
総統地下壕では、この日の朝も「いつもと何ら変わること」が無かった。しかし、張りつめた感傷的な空気が漂っていた。官庁街に対する激しい砲撃に引き続いて、モーンケは「持ちこたえられるのはせいぜいあと2日」と警告した。正午近くになって到着したヴァイトリンクは弾薬不足のために防衛線はその夜の内に崩壊するという見通しを述べ、再びベルリンからの突破脱出の許可を求めた。だが、ヒトラーはこの要請に即答を避けた。
午後3時15分、ヒトラーとエヴァ・ブラウンは居間で自決を遂げた。2人の遺体は帝国官房に隣接する新総統官邸の中庭で焼却された。総統地下壕内は多くの人々の重苦しい気分はがらりと変わり、やけ酒をあおり出す連中が多かった。この時、ボルマンの頭は後継者とナチ新政府の問題で一杯だった。まずバルト海キール近くのプレンにあるデーニッツ海軍元帥の司令部に打電し、「貴下が総統後継者に指名された」と簡単に伝えた。また、ボルマンは総統の死をデーニッツにあえて知らせなかった。ヒトラーの後ろ盾を失ったボルマンがナチ新政府に参加するためにはベルリンを脱出しなければならないが、ゲッベルスやクレープスらはベルリンに留まって自殺するつもりでいた。
ベンドラーブロックの地下にあるベルリン防衛司令部にSSの尉官が午後6時に姿を現した。ヴァイトリンクと幕僚はこの日の夜にベルリンを脱出する計画を検討していたところだった。SS尉官はヴァイトリンクに向けたメッセージを持参していた。その内容はあらゆる突破計画を中止し、ただちに総統官邸に出頭せよというものだった。
総統地下壕に到着したヴァイトリンクはゲッベルス、ボルマン、クレープスの3人に迎えられた。3人はヒトラー夫妻が自殺した部屋に案内し、遺体は焼却して上の内庭の炸裂孔に埋めたと説明した。ヴァイトリンクはこの知らせを誰にも口外しないと誓約させられた。唯一この通告を受けるべき人物はスターリンだった。この日の夜に停戦交渉を試み、クレープスが赤軍司令官に通告する手はずになっていた。司令官は当然、スターリンに報告するだろう。
いささか呆然となったヴァイトリンクはその直後にベルリン防衛司令部にいるレフィオール大佐に電話を掛けた。具体的なことは言えないが、第56装甲軍団参謀長ドウフィンク大佐をはじめ幕僚全員を集めておいてほしいと伝えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます