前門の虎 後門の狼

8ターン目。

侵入者は昇降口に向かったことであろう。

ナナミはここで引き返すか、少し遠回りになるが『校庭』に出るかで迷った。

マップを順番に指で押さえながらルートを確認する。

「校庭に出ても、侵入者が昇降口から校門に行って待ち伏せする可能性もあるのか」


えっ、ちょっと待って。校門で待ち伏せされたら・・・

「ユア、ストップ」

ナナミは思わず大声を出した。


確かに侵入者は通行止めを食らってユアに追いつけなくなったが、回り込んだとしたらぎりぎりで校門でユアが来ることを待ち構えることが出来た。


校門の一つ隣の『購買部』に居たユアはナナミの声の大きさに慌てた。

「いきなりどうしたの?」

「侵入者が最後の最後で校門で待ち伏せしているかも」

「えっ、ちょっと待ってよ。追いつけないはずじゃあ」

ユアも6ターン目で侵入者がいた『1―B』の教室から、順番に指で追って確かめてみる。

「本当だ。回り込んだら9ターン目で校門にたどり付けちゃう。どうしよう」


侵入者が今までどんなルートを歩んで来たか分からない。同じ部屋には行けないから校門には回り込めないかもしれない。

でも侵入者が行ける可能性がある場所に進むというのは危険だ。

「一端引き返そう。ユアはプールに。あー、でもそうすると他の教室に侵入者がいた場合、次のターンで捕まるかもしれない。校門に居たらアウトだし、違う部屋だとしたら引き返した方がアウトになる」


ゲームも終盤になってきた。

どのルートを通っても捕まる可能性が出てきた。ここはもうどこかで勝負を賭けるしかない。

ユア本人に行動を任せるしかなかった。

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