おとり

7ターン目もナナミは前進を続けた。

ナナミは『保健室』

侵入者は『1―C』に移動しているであろう。

逃がさないように『昇降口』で待ち受けるにはそれしかないのだから。


「ちょっとナナミ、大丈夫なの? 侵入者は絶対昇降口で待ち構えているよ」

心配したアスカが言ってくる。

「うん、大丈夫。次に引き返すつもりだから。私が引きつけている間にアスカとカナさんは上から逃げちゃって」

「ありがとう。でも気を付けてね」

カナからのお礼の言葉が嬉しかった。


でもどこかで100%喜べない自分がいた。

このゲームは生徒の誰か一人が捕まった時点で侵入者の勝利で終了である。

その捕まってしまう犠牲者が自分でなければ、ゲームには負けたが被害を受けることはない。

先程ユアが捕まることが確定と思った際に、拷問されるであろう光景を想像して悲しくなった。

なったけれど、どこかで自分ではなくて良かったと思ってしまった。

自分だけは助かりたいと思うなんて嫌な性格だなとナナミは思った。


だからこそのおとり役をやってみた。醜い心を持った罪滅ぼしの意味も込めて。

やはり4人全員の脱出が一番ベストなのだから。

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