1ターン目

最初は侵入者の移動から始まる。

この侵入者は男性が操作している。モニター募集の際に女性は生徒役。男性は侵入者役と決められていたらしい。

例えバーチャルな空間といえども、キモいオヤジかもしれない男が操る侵入者と鉢合わせになったら何をされるか分からない。

絶対に見つかりたくないと思えた。


侵入者がいる校門から移動できる場所は『校庭』『昇降口』『購買部』の3つある。

全体マップを見てみると、それぞれの部屋からは必ず3つの部屋しか行くことができないようになっていた。

はたしてどこに移動したのか。

生徒同士は会話ができるが、侵入者とはもちろん会話ができない。

とりあえずまだ距離は離れているから悩む必要はないが。


「ねえ、ナナミ。侵入者はどこに移動したと思う?」

アスカから連絡がきた。

「分からないよ。私たちに近付くために昇降口にしたか、それとも裏をかいて校庭にしたか」

「だよね。とりあえず私は3―Cの教室に行くね」

アスカからの通話が終わると同時に教室の扉が開き、本人が入ってきた。本当にそこにいるみたいに自分と同じ制服を着たアスカがいる。

「一人は心細かったよ」

抱きついてくるアスカ。触っている感触までが伝わってくる。何かよく分からない世界であるが6G回線というのは凄い。


やっと会えたアスカだったが今度はナナミが移動しなくてはいけない。名残惜しそうな表情を残したまま『3―A』の教室に向かった。

ユアは先に移動したようで、もう3―Aの教室には誰もいなかった。

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