エルアラメイン真の試練 第4階層

ゴーレムでの偵察を終えて、俺は愕然とした


「どうしたの、高野君?」


南が心配そうに俺の顔を見る


 近くで見る南の目は美しく、長い睫毛が風で揺れそうだ


 潤んだ唇もまるで果実の様だった


「南、気を引き締めて、次、ドラゴンだよ


 緑色のドラゴン」


「ドラゴン?」


南が驚く


「前は第10層の階層主だった


それも、火竜じゃ無い。おそらく風の竜、風属性の竜だよ」


「風属性の竜という事は火属性が弱点ね」


南が気がついた様だ


「火の魔法攻撃は有効だと思うけど、ドラゴンはそう簡単でも無いんだ


 俺、喰われかけた」


「高野君、どういう事?」


「ああ、俺、身体が半分千切れた......」


「高野君、そんな危険な目にあってたの?」


南が心配そうに俺を見る


「強敵だよ。でも、今回、二人いるよ。力を合わせれば


 ドラゴンの注意点を説明するよ」


俺はドラゴンの注意点を説明した


 ドラゴンの鱗が魔法も剣もほぼ受け付け無い事


 弱点は目と口と尻尾位な事


 目が見え無くても、至近距離は感知される事


 トドメは口の中に魔法を叩き込むしか無い事


 打ち合わせを済ませて階段を降りる


 広い空、草原にそよ風がなびく


 しかし、風景を楽しんでいる余裕は無い


 俺達は慌てて丘に上がった


 丘の上から草原を見渡す


「いた」


南が叫んだ


「こっち。み、見つかった」


「距離は?」


「1kmはあるよ。なんでこちらの位置が分かるの?」


「赤外線が見えるのかもしれないんだ」


それより南交戦準備


「うん」


 俺は銃でドラゴンを攻撃しつつ、南を護衛


 今回も、俺がドラゴンの口の中に魔法をぶっぱなす係だ


 ドラゴンが迫る


連続射撃の銃声が響く


 俺のアサルトライフルが300m以上の距離で着弾する


「効いている!」


「冷気よ 時が止まりしものよ 命の根元たる水より 盟約の言葉により 我が手に集いて力となれ『フリーズブリッド』」


続いて南の氷の攻撃魔法


 やはり効いている


 しかし、ドラゴンの鱗は破れない


 やはり、打ち合わせ通りやるしかない


 南の氷の攻撃魔法が更にドラゴンを襲う


 『瞬歩』、『跳躍』、『空間跳躍』を駆使して


 俺がドラゴンの気を逸らす


 ドラゴンは咆哮をあげて俺を襲う


 「上手い!」


南の氷の矢の魔法がドラゴンの目に刺さる


 ドラゴンが叫び、ブレスを吐く


 俺も南も避ける


 俺はたまらず前線に出た


 短剣でドラゴンと切り結ぶ


 ドラゴンの鱗はまるで金属出来ているかの様に美しい金属音を奏でた


 魔法が篭った短剣なのに


 俺は悔しかった。


「高野君気をつけて」


コクリ、俺は黙って頷いた


 このドラゴン、間違い無く前の火竜より強い


『シャー』


南の氷の矢の魔法がドラゴンのもう片方の目に突き刺さる


 グットタイミング


 アサルトライフルの射撃音が響く


 俺は短剣をアサルトライフルに持ち替え


 ドラゴンに撃ちまくる


『ギャーーーーー』


突然、ドラゴンが咆哮をあげる。


 南が隙をついてドラゴンの尻尾に攻撃魔法を叩き込んだ


 ドラゴンが大きく口をあける


「「今だ!」」


俺も南も同時に声をあげる


 すかさず


「冷気よ 時が止まりしものよ 命の根元たる水より 盟約の言葉により 


 我が手に集いて力となれ『フリーズブリッド』」


俺が『空間跳躍』でドラゴンの口の前に現れ、


 口の中に詠唱魔法を叩き込む


 まずい。俺は直感した


『ガチーン』


 ドラゴンの顋が閉じる音


 ついさっきまで俺がいたところにドラゴンの頭がある


 俺はドラゴンより一瞬早くドラゴンから逃げていた


『!』


ドラゴンがこちらを向いて、大きな口を開けた


 ブレスだ!


「気をつけて!」


まずい、空間跳躍出来るか?


 このタイミングで間に合うか?


「冷気よ 時が止まりしものよ 命の根元たる水より 盟約の言葉により 


 我が手に集いて力となれ『フリーズブリッド』」


その時、南の呪文詠唱が聞こえた


「遥!」


俺は何年ぶりかに南の名前の方を呼んだ


「誰か、遥を


 ブレスに殺られてしまう」


『ギャアアア-----』


しかし、悲鳴をあげたのはドラゴンの方だった


 遙の氷の攻撃魔法はドラゴンの腹の中を破壊した


 氷が軋む音がする


 ドラゴンは凍てついた


 そして、全身が凍り、クリスタルの美しい像の様になった


『ガキン』


クリスタルが割れる音がした


 南がスタッフでドラゴンの胴を殴った


 ドラゴンは氷の結晶となり、空に舞い散る


「高野君、私、高野君の事、今でも好きだから......」


遥は消え行くドラゴンの前で呟いた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る