目が覚めたら女の子になってた

俺は意識を取り戻し始めた


 段々と意識が回復する


 すると、周りの声が聞こえ始めた


「君、君は一体誰なんだ?」


「だ、誰?」


意識が戻った俺の目に入ったのは、クラスメイトの島村だった


彼は委員長で頭もいい秀才で運動神経もいい


 このクラスの中心人物だ


「う、うん 」


目を移すと島村の隣には南遙がいた。クラス一の美人。


 島村とウワサのあるやはりこのクラスの中心人物。そして俺の幼馴染


 彼らは俺の事が分からないらしい


「お、俺、高野だよ」


話して、自分の声に驚いた。何この声?


「あ、俺、俺の声?」


「君、大丈夫か?」


「大丈夫?


 あなた、どう見ても女の子よ。俺って?」


「い、いや、俺、高野だよ。さっき教室から飛び降りた高野だよ」  


南の瞳が大きく見開く


 一瞬、静かになる。皆、理解したのだろう


 性別が変わってしまったが、俺の正体に


「じゃ、君は高野君なのね? 」


南が目に涙をためて聞いてくれた 


「そ、そうだよ」


南は俺を抱きしめた。柔らかな身体の感触といい香りが心地よい


「分かった。取り敢えず理解した。経緯を教えて欲しいが、体調は大丈夫か? 」


島村が冷静に状況把握を試みる


「だ、大丈夫」


俺は簡単に説明した。転生時の失敗で新しい体を与えられた事


 俺達はこれから異世界に転生するらしい事


「い、異世界へ転生?」


「これ、アレじゃ無いのか?」


「モニタリング?」


「残念ながら違うわよ」


声が響いた


 そこには白い服を着た若い女性がいた


 いつからいたのか?


 全く分からない。さっきまではいなかった筈だ


「高野君の説明のおかげで、少し説明の手間が省けたわ


 そう、これから君達は転生する


 何か質問ある?」


「あ、あなたは誰なんですか?」


「私は施政官アリス。


 あなた達にとっては女神、の"様"な存在よ


 実際には違うけど、最もあなた達の定義にあたるのが、女神かしら。他に質問は?」


「何故、俺達は転生しなければならないのですか?」


島村が、質問する


「理由は転生は転生先からの魔法による召喚に応じる為よ」


「では、何故ボク達なんです?」


「いい質問ね。何故あなた達なのかと言うと、


 あなた達があの東京という街のあの時、


 あの場所で最低の屑だったからよ」


「何故、僕達が屑なんですか?」


島村がくってかかる。秀才の彼には屑呼ばわりは承服出来ないのだろう


「クラスメイトに自殺を強要する事が罪で無くて何なの? 」


「それは、結果的にそうでしたが、僕は彼が自殺するとまで思って無かった


 無論、後悔しています。高野君がそこ迄苦しんでいる事に気がつかなかった


 あの時、僕は強く反省しました。多分、大半のクラスメイトがそうだと思います」


島村が釈明する。はは、みんなにとってはそんな物だってのか?


 俺は涙が溢れてきた


「貴方達、高野君の顔を見てもそう言えるの?」


みんなの視線が俺に集まる


「「「「た、高野」」」」


みんなはっと俺の顔を見る


 南が叫ぶ


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


南は半狂乱になっていた


「私、何もしなかった。止めようとしなかった。許して。お願い」


みんな沈黙した


委員長の島村の言う事は本当なんだろう


 気軽な気持ちでいぢめて、


 彼らに俺の絶望や孤独感は分から無かったのだろう


「なんだよ。俺たちが悪いのか?


 あれぐらいで死ぬ奴が悪いんだろ?」


「須田君止めて」


南が叫ぶ、だが、須田は構わず続けた


「そもそも、こんな奴死んだ方がいいんだ


 お前が死んだ時、せいぜいしたのに、生き返りやがって、


 しかも、お前のおかげで、俺たちを巻き込みやがって、


 もう1回死ねよ」


須田は俺のいぢめの主犯格の男だ


 死んでも、俺は許されないのか?


 むしろせいぜいしただと


「俺がどれだけ苦しんだと思うんだ?


 なんで、そんなに俺が憎いんだ?


 俺、お前に何かしたか?」


俺は涙ながらうったえた。


 今まで言った事は無かった。


 辛かった。死んでも尚、許されないなんて


「そうだな。おまえは何もしてないな


 だけどな、お前をいびると面白いんだよ」


「須田、いい加減にしろ」


委員長の島村が須田を止める


「本当に見事な屑っぷりね


 2人共」


沈黙が訪れた


 俺は聞いた


「2人共って誰と誰の事なんですか?」


「決まってるでしょ。あなたとその須田君よ」


「なんで俺も屑なんですか?


 俺は何もしてないじゃないですか?」


「何もしてないから屑なのよ」


「そ、そんな......」


「まあ、後の事は次の転生先で折り合いを見つけてくれるかしら?


 手続きを進めたいわ」


「手続きって何?」


「あなた達はこれから救世主として異世界に転生するわ


 もちろん、普通に転生したって救世主にはなれない


 あなた達には救世主になる為、1人1個特別なスキルを授けるわ


 あなた達はそのスキルを使って転生先で救世主となって」


「「「「「救世主?」」」」」


みんな、同じ質問をした


「そうよ。人類の敵、魔族と戦ってもらうわ」


 アリスは当たり前の様に言う


「ま、魔族って?」


「戦って、死んだりしないのか?」


みんな口々に不安を口にする


「倒されたらもちろん死ねわ。覚悟してね」


アリスは冷たく言い放った


「何故僕達がそんな危険な事をしなければならないんですか?」


島村が尚も食い下がる


「あなた達が屑だからよ。宇宙はエントロピーにより平衡が保たれているの


 あなた達の愚行で負のエントロピーが増大した


 これを鎮めるにはあなた達の善行によって贖うしか無いの


 だから、死んでも、異世界を救ってね


 では、スキルリストを表示するわね」


島村は下を向いて、唇を噛み締めていた。一瞬、俺を見た


 彼は何かを悟った様な顔をした


 女性の施政官の上にリストが並ぶ


 そこには勇者、賢者、剣聖等ラノベに出てきそうなスキルが24種類出てきた


「あなた達が話しあって、自分達で決めて」


「僕達で決める?」


島村が質問する。彼は尚もリーダーの責務を全うする


「そうよ。私はあなた達の性格や才能を知らない


 あなた達自身が自分に最もあったスキルを決めるのよ


 ただし、勇者のみは慎重に決めてね


 魔族の王、魔王を封印出来るのは勇者だけよ


 簡単に死んでしまう様な人に任せたら、あなた達全員無駄死になるわよ」


島村は既に自分達の状況を受け止めた


 俺達は相談した。正確にはクラスの中心人物だった島村と南達で決められた


 勇者は委員長の島村が、賢者は副委員長の南遙がなった


 俺は『アルケミスト』というスキルを貰った


 俺が強く希望した。島村は安全な後方支援職を進めてくれたが、断った


 その他のクラスメイトもスキルをめいめい貰う。


 スキルには戦闘系と明らかに後方支援スキルに別れていた


 その為、あえて戦闘に向かないスキルを選ぶ者も多かった


「最後に言っておくわ。あなた達はもう二度と元の世界には戻れない


 あなた達が元の世界に戻るには、次の世界を救うしかない


 次の世界を救って、天寿を全うしたら、元の世界に別人として転生できる


それと、高野君が自殺した場合も元の世界に戻れないから注意する事よ」


「ちっ」


須田が舌打ちする


「そんな、元の世界に戻れないなんて」


「世界を救えないと永遠に次の世界で転生を繰り返す


 次回の転生ではスキルはないわよ」


「そ、そんな」


「頑張って、世界を救う事ね。じゃ、転生してね」


そうアリス言うと俺達を光を包んだ。そして意識が飛んだ

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