第5話 第1次試験 子供騙しで致命的

宿屋 朝7時


「......」


ガルフは外でトレーニングしている中、クラトスはベッドの上で思い出していた。昨日のエルマが語っていた説明を。


「何か違和感があったような、なかったような......」


わからない、ただ無意味に悩んでいるだけなのかもしれない。

ガルフが昨日の夜話していた、持ち込みがありかどうかもわからない。


「そうなんだよな、試験の直前で言われてもな.......」


80時間のサバイバルは極限だからこそ食べ物や飲み物の持ち込みの有無くらい教えるべきだろう。


「細かいルールを書いた紙は渡すとも言っていたが......」


いつ渡すんだ?


「......もう一度考えて......」


コンコン


ドアからノックの音が聞こえる


「誰だー?」

「私、ラナよ」


クラトスはドアを開けるとラナが立っていた。


「朝ご飯だってアルが」

「あぁもうそんな時間か......」


クラトスは頭のもやもやが晴れぬまま、朝食に向かうのだった。



◆◇◆◇


「しっシルラさん!それ本当ですか!?」

「多分そうよ、クラトス=ドラレウスでしょ?」

「ガルフは?」

「クラトスと一緒に来てたわ、結構大所帯だったわ」

「ははは......きっと、何かに巻き込まれたのね」


ナシアーデは少し苦笑いしながら答える。クラトスはめんどくさがりだが優しく正義感が強い、そのため騒動などに巻き込まれる体質だった。


「でも今年の試験はおそらく近年でもないほどの最難関行けるかしら?」

「え?シルラさん今年はいつも通りじゃなかったんですか?」

「っ!ナシアちゃん知らなかったの!?」

「?」

「あのね――」


ナシアーデは知らなくても無理はなかった。エルマの前任者アグが突如亡くなったことでエルマは魔導師試験試験官の代表者になった。当初はアグが考えていた通りの試験内容のはずだった。だがエルマは試験内容を突如変更させた、変えたのはほんの数日前の事である。内容をガラリと変えるならば本来準備期間が必要なのだが、なぜか準備はできており今年の試験は全般エルマが考えた試験内容である。


「......」


ナシアーデは絶句する。その試験内容は4年前とは比べ物にならないほどの難易度であった。


「こっこんな勝手許されるんですか?」

「でも許されたのよねぇ」


もし自分が誘ったせいでクラトスやガルフに何かあったら......


「ナシアちゃん?」

「はい」

「大丈夫よ、一度クラトス君たち見たけど彼らは強い」

「シルラさん......」

「私が言うんだから間違いない!」


ナシアーデはシルラを慰める。ナシアーデは何も悪くない、クラトス達の事を思い試験に誘っただけだ、誘ったのは実力を強く買ってたから。普段ならクリアできてもおかしくない実力を持っているのに今年は不運にエルマが決めた試験を受ける羽目になった。それだけだナシアーデは悪くない。


◆◇◆◇


宿屋 朝


朝食のサンドイッチとコーヒー前にクラトス以外は時にしゃべりながら食事をしていた、クラトス以外は......


「う~ん」

「クラトス、う~んう~んとか口に出さないでくれ」

「クラトスさん、どうしたの?」


クラトスは何か引っかかりを取り除こうとしているがまだわからずにいた。


「なっなぁ皆、昨日のエルマの事で引っかかるところなかったか?」

「むぅ?我が昨日言った持ち込みの事とかそういうのか?」

「あぁそういう些細なのでも」


一人で考え込んでいてもキリがないと思い、皆に疑問をぶつけることにした。


最初はラナが口を開く

「私はあの時は怖かったから覚えてないわ」

続いてヘイブ

「そうですね......魔物を倒すとポイントが貰えるとは言ってましたけど、場所の指定はされていませんでしたね」


その言葉にガルフは眉を動かす。


「む?森の場所を指定してはいなかったか?」

「えぇ確かにとはいってましけど、それは此処の魔物は把握しているとだけでしたよ」

「ぬ!言われてみれば......」

「確かにそこもおかしいよな、あとは無情の森の所の説明も何だが......」


クラトスはアルに話を振る。

「アルは何かるか?」

「あの、『無情の森』の話をしていた時に少しあれっ?と思うところは確かにありました皆さん自然に流されて忘れてましたが......」

「そっそうだよな!なんか変な所あっただろ!」


クラトスが一番違和感があった所がそこであった。すごく自然に流されて忘れられていた所。


「むぅだが長く考えていても仕方ないぞ、これからサバイバルが――」

「――あっ」

「クラトス何かわかったのか!?」


長いというワードから一つ思い出したことがあった。

それはエルマが最初の方に話していた言葉。



「......実は既に1次試験が始まっているのかも......」

「そっそのようなことが」

「クラトスさん、さすがにそれは」

「よく思い出せ!、エルマは『無情の森』の説明を自然としていたがその前にな【まぁ長話はこの辺にして......1次試験を始めようか】って話してたんだ!!」

「っ!」

「なっそんな!?」

ガルフは興奮押し止まずに話しかける。

「しっしかしだなぁ!1次試験が始まっていると言ったって魔物を......あっ」

「そうです、森で倒せなんて一言も言ってません」


ラナも何かを思い出したように話す。

「そういえば用紙と腕輪をちゃんと貰おうねとか言ってた」

クラトスは興奮しながら話す。

「そうだよ、ご丁寧に会場で休むとか言ってな!!俺たちはこんな子供騙しに騙されそうになってんだよ!!」


クラトスは辺りを歩き回ると今度は冷静になっていく。


「今時間は.....」

「そうだな、8時前といったところか」

「すぐにエルマに会いに行こう!」


エルマがいるであろう試験会場に向けて全速力で――


◆◇◆◇


「えっ......エルマ......よっ用紙と......腕輪を......」


クラトス含む5人もうスピードで会場まで走り抜け、エルマに会いに行った。


「ははは、すごいギリギリだね、はい」


それぞれに手渡される腕輪と用紙。


「早く魔物倒しに行かないと.....」

「もう2時間もないよ急いだほうがいい」


エルマは急かすようにクラトス達に呼び掛ける。


「じゃじゃあ行ってきまああす」


こうして何とか用紙と腕輪を手にいてることが出来たクラトス達。


◆◇◆◇


―――

――


「......ランクDで10Eで1」


クラトスは会場近くの魔物をぶつぶつとつぶやきながら倒していく。

「クラトス......そろそろ時間だ」

「わかった、ガルフ」


そういわれるとクラトスは剣を納めてラナ達と一緒に無情の森に向かうのであった。




無情の森前


総勢10000人ほどの魔導師を前にエルマはうちわで顔を仰ぎながら話す。


「昨日の僕の言葉に疑念や疑問を抱いて僕の所へ来た者ならわかるだろうけど、試験自体は昨日から始まってたんだよ」


魔導師の中には同様するものもいれば、堂々としている者もいる


「(本当に質が悪い)」

「まぁそんな君たちを落すの良いけど、それなんかつまらなくない?」

「(くそったれめ)」

「魔物を倒すと手に入るポイントは当然気づけた人の方が有利なんだけど」

「(エルマ......お前って奴は)」

「僕は優しいからね、特別に愚かな君たちを救い上げようと思う!」


おそらく気が付かなかったであろう魔導師達にルール用紙と腕輪が配られる。


「まあその腕輪をつけて魔物を倒すと魔物のランクごとにポイントが増えていくから外さないように注意してね」

「用紙については.....とくにないね、うん」


そしてエルマが手を大きく叩く。


「もうすぐ10時だ今から無情の森に入ってもらう」


「ガルフ、ラナ、アル、ヘイブ......大丈夫だ俺たちは必ず生き残って見せる」

「うむ、当たり前だな」

「そうね、皆無事に済むように」

「はっはい私もお嬢様をお守りいたしますよ」

「ええ......そうですね......」

「スタートと言ったら一気に森の中へ入ってね、すぐに閉めるからね。ではカウントダウンスタート!」


「5」


これより始まるは高難易度に変貌を遂げた魔導師試験――


「4」


様々な陰謀渦巻く魔導師試験――


「3」


それでも魔導師は目指す――


「2」


魔導師とは困難に挑む者――


「1」


そして解決する者。そして――


「スタート!!」


夢を現実のものとするため――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

魔導師試験 第1次試験 

          

1.意図的な殺害行為、拷問行為、強姦行為を禁ず

2.魔物のランクに応じたPポイントをとどめをさした魔導師に与える。

  S級1000 A級500 B級200 C級100 D級10 E級1

3.魔導師を倒した者に300Pを与える。

4.倒された魔導師が保有していたPは倒した魔導師に譲渡される。

5.72時間経つと8時間の間特定の場所へ続く道が開く。

6.ゴール地点は72時間の間に少しずつヒントが与えられる。

7.リタイアを望む者は大声でリタイアと叫ぶこと。

※10分間経つと受理されるそれまでにリタイア宣言の取り消しは可能


上記を守り1000Pを溜めてゴール地点に居た者を第1次試験の合格者とする。

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