第3話

理純りずみ先輩! 貴女という人は、なんで……いつもいつもわたくしが会う度に! ぱんつ見せてくるんですかぁぁ!」


 縄跳びの縄に絡まって、スカートめくれてるツインテール娘。

 彼女は、雪川ゆきかわ静流しずるが、火蔵かぐら宮子みやこと並んで、苦手としている人物だ。

 静流に負けず小柄だが、これでも高校3年の先輩……理純りずみ智良ちら。星花女子学園にもわずかに7人しか確認されていない、伝説のグランド要注意娘の一人である。


「今週で、もう3度目。絶対、わざとですよね!?」


「わざとじゃないよ! 限りなく偶然じゃなくなるよう、身体に縄が絡まる跳び方してたけど!」


「それはわざとと言うのです!」


 智良ちらは、転んだり、何かに絡まったり……漫画のラッキースケベ展開的な方法で、女の子へパンツを見せることに興奮を覚える、星花屈指の変態なのだ。


「あ、脚を閉じなさい! チラチラ見せないでぇぇ!?」


 先輩の白いパンツに、顔真っ赤にしながら、それでもほどいてあげる静流。


「くぅこの初々しい反応! これよ。あたしが欲しかったのは、このリアクションなんだ……!」


 どうも静流は、この変態さんに気に入られてしまっているらしい。

 パンツ見られて悶え喜んでる痴女先輩へ、静流はとっても冷たい眼で、


「……先輩、春には卒業ですよね? こんなコトしてる場合ですか」


「ぐわぁ、現実に引き戻さないでぇ!?」


 そのツッコミは氷点下過ぎる。「氷の女王」のクリティカルな一言に、ダメージを受ける智良。

 静流は呆れつつも、


「やれやれ、ですね。少しは懲りてくださらないと、縄、ほどいてあげませんよ?」


「……ほどかなくて、いいんじゃないかしら」


 静観していた宮子が、くすくすと妖しく笑った。


「うげぇ火蔵かぐらぁ! なんで、あんたがここに!?」


 露骨に宮子を怖がる智良。

 グランド問題娘7人には、それぞれ強弱関係が有るのだ。


「ふふ、今日はわたくし、1日風紀委員ですの。そ・れ・よ・り」


 あんたが風紀委員?と全く信じてない顔の智良へ。

 宮子は上品にスカートの裾を折り、膝をついて、にじり寄る。


「わたくしの前で、そんな大胆な恰好……先輩の、えっち♡」


「み、見るなぁ!? あたしは……あたしは、恥ずかしがる子にパンツを見せるのが好きなんだ! あんたは、エヴァと同じ匂いがするからダメぇ!?」


 変態発言をしながら、今さら羞じらって脚を閉じる智良。

 けれど、その反応は宮子をニッコニコさせるばかりだった。


「ええ、その気持ち、とてもよく分かります。羞じらう女の子、いいですよね。まさに、今の先輩のような……♡」


 ぺろ、と舌なめずり宮子。


「わたくし、基本ネコですので。自分からは手を出さないのが信条ですが。こんなに、誘惑されてしまっては、ね……?」


 智良の頬を指でなぞって、カラダごと、覆い被さって……。


「ひぎゃぁぁぁぁ!? たーすーけーてー!?」


 ……そんな、百合の花乱舞の光景を見ながら。

 静流は顔を茹でダコのようにしながら、ピピ―、ピピ―と警笛ホイッスルを吹き続けるしか、出来なかった。


 ※ ※ ※


 ……危うく、法に触れるところだった。

 制服を着崩したまま、うわーんと泣きながら逃げ去っていく理純りずみ智良ちら


「ふふ、満足♪」


 何だかツヤツヤしながら見送る宮子、静流の方を振り返って、


「でも、これで先輩もちょっとは懲りたでしょう。貴女の役には、立てたと思うのだけど?」


 ……静流が、10mぐらい離れて、睨んでいた。


「……遠いわね」


「えっち。変態。近寄らないでください」


 構わず宮子、長い黒髪を翻し、軽やかにステップを踏みながら、静流の顔を覗き込む。


「でも、手段はともかく、理純りずみ先輩を更生させたのは確かでしょ? ご褒美にわたくしのお願い、聞いてくれてもいいんじゃないかしら」


 楽しそうな宮子。静流はしばらく、むむむと思案して。


「……えっちなお願いは、ダメですからね」


 不本意だけど。とっても不本意だけど、宮子の働きを、認めることとした。

 腕組みしながら睨んでやるけど、ロリめな容姿の静流では、いまいち迫力が出ない。

 白銀の髪の頭を、宮子になでなでされてしまった。


「こ、子ども扱いしないでくださいっ。同級生でしょう」


「ふふ、つい」


 乱暴に腕を払われても、気にした風も無く。

 夕焼けに染まり始めた、旧校舎の横で。宮子は黒髪を靡かせながら、謳うように。

 「お願い」を口にした。


「今度の日曜日。わたくしと、デートしましょう?」


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