【自己愛性パーソナリティ障害】相模原障害者殺傷事件 前半の後半【動機】

前半からの続き


 彼らは、分離―固体化(マーラー)が完遂していないために、他者と未分化な一体感を抱いている。

 そして現実に、他者が目の前に現れると、自身の一部或いは延長として認識する。


 植松被告の場合、自身をブサイクと言ったりして、それなりにコンプレックスが強いようである。最初は障害者に対して、本当にシンパシーを感じていたのではないかと思う。


 しかし、実際に仕事をしてみると、日々『裏切られ』続けることになる。

 障害者は自分の延長のはずなのに、何故か思い通りにならない。そして、特に堪えるのは、呼びかけても応答がないことだ。


 分離不全は常に不安で寂しがり屋なので、孤立することを最も嫌う。

 つまり、『シカトされてキレた』というのが、犯行の動機なのである。

 コミュニケーションのとれない障害者を『心失者』と呼んで、特に敵視していることにも、その点に対するこだわりが感じられる。


 自己愛性パーソナリティ障害における差別のメカニズムも、基本的には分離不全が原因である。

 コフートは鏡像転移という概念を提唱しているが、ここでは、それとは別に鏡に例えてみる。


 彼らは心の内で、他者に対して未分化な一体感を抱いている。

 そして現実に、他者が目の前に現れると、自身の一部或いは延長として捉える。

 それは、鏡を覗き込むようなものなのだ。

 そこで鏡に写ったのが、自身とは全く相容れない人物だったらどうなるか。


 性別、人種、民族、宗教、目の色、肌の色、容貌が全く違う。リベラル派だった、エコロジストだった。

 或いは自身より『劣っている』(あくまで主観的に)人物だったらどうなるか。

 「違う、これは俺じゃない」とパニックに陥るだろう。


 逆に自身より『優れている』人物ならどうなるか。

 目の前に写っているのが松坂桃李だったら。福山雅治だったら。或いは上半身ムキムキのプーチン大統領だったら。

 何の疑いも抱かずに、理想化転移して同一化してしまうだろう。


 こうして、自己愛性パーソナリティ障害では、他人を敵と味方に、完全に二分してしまう。

 敵となれば、攻撃することに躊躇はない。そしてそれを正当化する。


 クラインの対象関係論では、この他者の二分化を、『よいオッパイ』『悪いオッパイ』と表現している。


 トランプ大統領の差別傾向も、このメカニズムによるものである。

 ミスター・プレジデントも、尊大で荒ぶってはいるが、結局のところ、内心の不安感と自信のなさからはいつまでも逃げられないのであろう。

 詳細は『自己愛性ブラック』の方にも書いているので、そちらをどうぞ。


 ところで反社会性が、自己愛性と共存しているとは思えないのだが、これを解説するとなるとまた一作書かなくてはならなくなるので、またいずれ。


 公判は既に進んでいるので、また後で。

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