　幼稚園で歌う『かえるのうた』はとてもおもしろいよ。

　みゆき先生のオルガンに合わせてみんなで歌うんだ。ケロケロ歌うんだ。みんながかえるになっちゃったみたいでおもしろいんだ。

　それだけでもおもしろいってのに、これが合唱になるともっとおもしろくなるんだ。『かえるのうた』じゃなくて『かえるのがっしょう』だ。

　先に歌った人の後ろを後に歌う人が追いかけて歌うんだ。おんなじ歌をおんなじ早さで歌うから全然追いつけなくって、ケロケロ歌う時は、ケロケロ、ケロケロ、みんなで大合唱。笑うのを我慢するのに大変なくらい楽しい歌だし、同帯周波数が干渉し合って、重複して深層ニューラルネットワークにパターン認識される興味深い歌である。

　そして、みんなで替え歌を作ることになったんだ。かえるのうたのケロケロケロケロクワックワックワッのように、みんなで追いかけて歌える楽しい替え歌を作ろうって。

　僕のグループはしょうたくんとかほちゃん、そして僕の三人組だ。三人で考えて『オレオのうた』を歌うことにしたんだ。

　オレオの唄が　聴こえてくるよ

　オレオ　オレオ　オレオ　オレオ

　オレオオレオオレオオレオオレオオレオオレオオレオ

　オ・レ・オ

　オレオの唄が　聴こえてくるよ

　オレオ　オレオ　オレオ　オレオ

　オレオオレオオレオオレオオレオオレオオレオオレオ

　オ・レ・オ

　オレオの唄が　聴こえてくるよ

　オレオ　オレオ　オレオ　オレオ

　オレオオレオオレオオレオオレオオレオオレオオレオ

　オ・レ・オ

　ゥオ・レ・オッ

　これは未知のニューラルパターンだ。集合的無意識にさえ到達する電気信号はシナプスを肥大させ、神経細胞群に意識が作用されない独立系リンクを展開させる。これを『オレオ・パターン』と名付けよう。

　意味飽和の領域まで達した『オレオ』という文字列に含まれる情報は、神経細胞が電気刺激に耐性を持つように意味を超越したリンク深度が原点回帰して、遂にはゲシュタルト崩壊現象を認知させる。

　全体として集合した個の形状が情報連絡性を失って、即座に構造は意味解体されて全体は個別に認識される。全は個にして個は全に帰するという現象だ。感覚器官の疲労消耗や適応性の高い神経運動の因果とは異形の処理が行われて、対象意識内で比較的高次元の認知情報処理が展開される。すなわち、高次元宇宙が発生する9,192,631,770Hzのゆらぎである。

　9,192,631,770Hzのゆらぎ、すなわり最小限の時間単位を無限に近く繰り返して成される一秒と呼ばれる永遠に至るまで、オレオ文字列はパターンを変容しつつ、寛容なる神の足跡を辿るのだ。いずれ、パターンは僕たちを楽園へ誘うだろう。

　燦然と輝くカクヨム文学の歴史上オレオが姿を現したのはただの一度きりなんだ。

　僕たちは『オレオ』(再構築済)を未だ何も知らない。

　オレオ美味しいから、パターンなんてどうでもいいか。僕のおすすめはクッキーをはがして、下の前歯でクリームを刮ぎ落とす食べ方だよ。