第31話

「で、そのことアイコに告ったのか?」と、金太。

「いいやァ、そげなことできるわけなか」

 ノッポは勢いよく首を横に振った。

「ちょっと待てよ、昨日寝ながら話したときいわなかったけど、福岡に帰りたくないっていうのは、ひょっとしてアイコのこともあるのか?」

「……」

「やっぱりそうか。デーモン、なんかノッポのちからになれることはないだろうか?」

 金太はデーモンのほうに向き直って訊いた。

「そうだなァ、ノッポのこと思ってアドバイスするなら、ここはちゃんとアイコに告白するべきだと思うよ。じゃないと絶対に後悔すること間違いないから。ここまで来たらボクも話すけど、じつはボクも向こうにガールフレンドがいたんだ。結構長いこと付き合ってたけど、パパの仕事でこっちに戻って来なきゃならなかった。当然さよならしなきゃならなかった。辛かった、だから金太の気持ちもノッポの気持ちもよくわかるよ」

 デーモンの目頭が少し潤んでいるように見えた。

「そんなことがあったんだ」金太は同情する。

「このまま黙ってると、この先なにもかもが中途半端になっちゃうんじゃないか? いいじゃないか告白して振られても。なんでも挑戦することが大事だよ。がんばれノッポ!」

 デーモンはノッポの肩をぽんぽんと叩いた。

「うん」

 ノッポは短く返事をした。

「なんならオレたちが段取りしようか?」

「いや、そのときは自分でやるけん、心配いらん」

 風が止んだようだ。百舌が冬枯れの銀杏の木でやけに高い声で啼いた。

「わかったよ。でもダメだと思ったらオレたちにいえよな。ちからになるから。

 そろそろ帰ろうか、なんか腹減って来ちゃった」

 金太の掛け声で3人揃って自転車に跨った。 

 試験がすんだらまた会おうと約束をしてそれぞれの家に向かった。

 家に帰った金太は、すぐとノッポの家に電話をかけた。

「トオルくんはいま家に帰りました。彼が家出したのは、こっちに友だちがたくさんできたので、その友だちとさよならするのが辛かったようです」

 電話でノッポの母親に伝えた。金太としては、このことを切っ掛けにふたたび親子の会話がはじまればいいと考えた。

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