第11話

 そういえば、ここはもと畑だったこともあって、畑の作物を荒らす野ねずみがのさばっていたことがあった。おそらくそのねずみの仲間に違いない。

 かといって、またデーモンの家に戻るわけにもいかず、とりあえず小屋の補修で時間を稼ぐことにした。早速ふたりして隅々まで点検したところ、小屋の隅にねずみの出入りするに格好の穴が開いているのが見つかった。

 金属製の菓子箱のフタを穴の上に置き、それだけでは動かされる可能性があるので、木製の机を移動させて脚の部分をそのフタに載せて重しにした。

 これでいいと胸を撫で下ろした金太だったが、ジョージが受けた恐怖はそうは簡単に払拭できるものではなかった。そんなジョージの姿を見て、気持ちの優しい金太は思い切ってもう1度自分の家にジョージを連れて行くことにした。

 金太は食事に出されたスパゲッティやカボチャの煮つけなどを手のひらに隠すようにして自分の部屋にいるジョージに搬んだが、それだって長く続けられるものではない。

 充分に注意していた金太だったが、危うく姉の増美に見つかりそうになった。

 そんなことを気にしているのかいないのか、ジョージはどこかで覚えたラーメンが食べたいと金太に注文をつけるのだった。

 ある日曜日、これ以上隠し続けるのは無理と思った金太は、メンバーを秘密基地に集めると、アメリカから来たジョージの存在を明かすことにした。

 ノッポ、アイコ、ネズミの3人は話の内容を聞かされないまま小屋にやって来、いきなり白い箱を開けて見せられた。

「なんね、この薄汚か人形は」ノッポはメガネを人差し指で上げながら訊く。ほかのふたりも同時に金太の顔を見た。

「よく見ろよ、人形なんかじゃない。ちゃんとした人間だ」

 そう聞かされた3人は、信じられないといった顔でお互いを見たあと、そっと白い箱のなかを覗き込んだ。確かに人形と思った物体は、不貞腐れた顔でゆっくりと瞬きしていた。

 驚きの顔を隠せない3人に金太はこれまでの経緯を説明した。金太としては、みんなの家にジョージを引き取ってもらいたいというのが本音だった。だがその期待は真正面から外れた。ノッポとアイコはマンション住まいであること、ネズミにおいては、母親が動物アレルギーであるためいくら隠してもすぐにバレてしまう、ということでふたたびジョージは行き場を失うのだった。

 結局ジョージは、当分の間この小屋で生活せざるを得なかった。それには2度とあの熊のようにでかい(ジョージの視線)ねずみが入って来ないようにして欲しいとの要望があり、5人全員で小屋あるいは小屋の周囲を念入りにチェックした。さらに、金太が家から持って来た小さな容器を取り出した。それは魚釣りをするときに使用している虫除けスプレーで、もうそんなことはないだろうけど、万が一ねずみがジョージを襲おうとしたときに吹きかけたらいいと考えた防御アイテムだった。ジョージには丁度いい大きさで、何度も試し打ちをするのだった。

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