第17話 勝負
冬知屋さんと和解した後、二人で約一週間ぶりに下校することになった。
どうやら彼女は完全復活しているらしく、先ほどからほぼノンストップでからかってくる。いや、からかってくれと言ったのは僕だけども……
でも、これでこそ冬知屋さんって思っちゃうから僕はもう手遅れなのかもしれない。
「なに、ニヤニヤしてるの?」
「いや、やっぱり可愛いなぁって見惚れてたらつい……」
「か、可愛いって……どうせ他の女の子にも同じこと言ってるんでしょ?」
「僕がクラスでぼっちなの知ってるよな?」
「そ、そう……ふーん……そっか」
冬知屋さんは耳を赤くしてそっぽを向いた。
そうだな。変わったことと言えば、僕が好意を激しくぶつけてから、恥じらうことが少なくなり、からかわれても反撃に出ることが増えたってとこかな。ちょうどさっきみたいに。
「ところでさ。芦谷君って何にわかなんだっけ?」
「ん?」
「今村と対峙したとき芦谷君、僕はナントカにわかだって言ってたよね?あれ何だっけ?」
「わかってて言わせようとしてるだろ」
冬知屋さんはいたずらっ子のような純粋無垢な笑顔の花を咲かせている。
「それは、その……別にいいだろそんなの」
「さっきあれだけ口説き文句を並べてた人が今更下の名前呼ぶのを躊躇うの?」
「だってまだ、仲良くなって間もないし、それに資格の件だって……」
「はいはい。言い訳は署で聞くから、ご同行願おうか」
「警察かよ……」
「手錠かけられたいの?」
「僕にそんな性癖はない!」
ほんと一瞬でも気を抜くと、余計な発言をしかねないな。気を付けないと。
「まあ、冗談は置いといて。芦谷君、私と勝負しない?」
「勝負?」
「そう。内容は一週間後に控えている期末テストの成績で。心配しなくても未来予知で不正はしないから」
うわ。そういえばもうすぐテストだったのか。完全に忘れてた。未来予知云々に関してはまあ、本人から言質が取れたならいいか。
「ならいいけど。どうしてだ?」
「罰ゲームが目的なの」
「罰ゲーム?」
「私が負けたら芦谷君の言うことを何でも一つ聞いてあげる」
「ナンデモ?」
何でもってあの何でも?いや、冬知屋さんに大それたことをお願いする勇気なんて僕にはないんだけどな。何でもって女の子から聞くとグッとくるな。心に響く。
「えっちなことはなしだから」
「何でもの概念が破綻してるんだが……」
「残念?」
「言われなくても頼まないから!」
ったく油断も隙もあったもんじゃないな。
「で、冬知屋さんが勝ったらどうすればいいんだ?」
「その冬知屋さんっていう呼び方を変えてもらうわ」
「え?」
「芦谷君が負けたら紗希って呼んでもらうから」
「…………マジ?」
「嫌なの?」
「嫌とかじゃないけど、恥ずかしいっていうか……」
「じゃあ、そういうことでよろしくね。紗希ちゃんにわか君」
「~~~~~~~~~ッッッ!?!!!?!」
こうして色んな意味で一生懸命になれるテスト週間が始まった。
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