レトロゲームと古本屋 ゼルダの伝説&エスプレイドΨ

「店主」

「なんだいうめのさん」


 大きなねこ耳つきパーカーを着込んだ少女が、一四インチブラウン管テレビから視線を動かさずに呼びかける。

 この古本屋の店長、大平も梱包作業の手を止めずに答える。


「爆弾で壁に穴があいたと思って入ってみたら、問答無用で『ドアノシュウリダイヲモラウゾ』ってお金持っていかれたのじゃが!?」

「まあほら……穴あけていきなりハートのうつわとかルピーとかくれるほうがよくわからんでしょ?」

「そうかもしれんが……おそろしいのう、ディスクシステム版『ゼルダの伝説』」


 腹いせに住人に剣を突き出す緑の勇者リンク。そんなことをしても洞窟の住人はしらんぷり。


「ところで今日は旭川はこないのかのう?」

「ああ、だって今日は――」


---


『キャッ……!!』


 雪の舞う夜空に少女の悲鳴が響く。


『Please continue』


「ああー! もう少しでいろりちゃんノーコンクリアだったのに……! ガラ婦人張り手つよい……」


 ばたり、と床に倒れ込むポニテ。

 二〇一九年一二月一九日。『エスプレイドΨ』の発売日なので、仕方がない。

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いつか短編に昇華する、もしくは消化されるための雑文集《フラグメンテーションフィールド》 みれにん @millenni

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