第13話嘘つき

嘘つき、嘘つき、お姉ちゃんの嘘つき


どうして、どうして、どうしてーー救ってくれるっていったじゃん


不甲斐ない夢を見る


いったい、あれから何度目の夜だろう

何度目の朝だろう――まぁ自分には関係ないか

「椎葉」は、もう壊れた


精神がやんでしまった

どちらの世界においても引きこもっちゃったのだ

まぁしょうがないといえる

なぜなら、現代にいればそうそう人の死骸を見る機会なんてないからだ

そこらへんは、「渡部」らと違うところである

「渡部」であれば、単純に見慣れているのだろう


あの時代を生きていれば、自然にそうなるというところがある、あの時代に生きていて死体を見たことがない、などということはあり得ない

ありえないのだ

次に、村風であるが村風も人の死体ではないが、動物の死体なら見慣れてる

何って立って漁師であるだからそれが関係しているのかどうかわからぬが


死体に関係する耐性があるという意味において位は「椎葉」なんぞ

はるかに、軽ーく上回るところがある

要するに経験値が二人とも違う

子の面子の中において椎葉だけが、普通なのだ


普通の女の子なのだ

グロッキーになってもしょうがないといえよう


「村風」は渡部に遠慮して近づかなくなったし、渡辺もそれに気づいたのか

積極的にかかわらなくなった

今この世界の3人はそれぞれ最悪な空気にいるといえよう


当然チームワークもといえそうだが、

そこは「お二人」


椎葉がいなくても連携することはできる

元々、渡辺は男のノリがわかる

そして男というものは生理的に気に食わなくても仲が良くなくても

特別連携するにあたって、

ダメというところのない生物だ


だから、渡辺は組める

下手に組める分――椎葉のことを置いてけぼりにしてることに気づきつつ

泥沼だ

平行線

変わらない平行線にいる

椎葉も、村風も、渡辺も平行線

ずっとこのままではいけないとおもいながら

かわらないし、かわれないのだ


内心焦っているのは、無から是も、渡辺も同じである

だがーー言葉を発することはできない

あるのは空虚な間だけだ


「あの、さ」

「何」

「別に、、、、、」

こんな感じに会話しかない

村風は部屋に閉じこもり、何か書いている


書いている?

いや、これは書いているのではない、

遊んでいるのだ

手遊びだ

心に穴が開きーー風が吹き抜ける

もはや、「椎葉」という体は生きるしかばねになってしまったのだ

誰かがどこからか活を入れなければ、動かないほど

自力では立ち上がれないほどに弱ってしまった


だが、村風も渡部も動けない

動くことができない――動くことのできる二人は、別の意味においては

動くことができない二人なのだ

その逆に、今動けない椎葉こそこういう事態で動ける人間である


3人の中において椎葉は精神的にもろいが、精神的に強いところもあって

それは、共感とかまとめるちからということになるだろう

だがーーそれを担う椎葉が倒れたのでは、

動きを担う彼らでは、間が持たないということにもなろう


ーーああ、いっそあの、むちゃくちゃな師匠こないかと渡部は思っている

ああ、いっそ終わんないかなと村風は思っている


そして同時にため息をつく

こういうところだけが、妙に息が合う二人だ

そこで顔を合わせて笑う

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