薄暗くあてのない道を、僕は歩く。そして遭遇した。世界を創る神と。

序盤は、主人公がクラスメイトと話しているだけのシーン。
ところが、あるセリフにドキッとさせられる。
引き込まれるように読み進めていくと、ひとつひとつのセリフが、語句が、描写が、とても示唆的であるということに気付く。

「この言葉はこれを意味していたのか」
「このシーンはこの比喩だったのか」
と発見するたびに、何度も読み返した。

闇と光。
閉じた世界と、その中に広がる広大な宇宙。
戸惑いと希望。
持つ者と持たざる者。

主人公とヒロインが互いに「どうして」と問い合うシーンが熱い。
迷うことなく真っすぐ答えるヒロイン。
考えて、悩んで、迷ったあげく、結局答えられない主人公。

……ああ。ここからして二人は既に「違う」存在なのだと突き付けられる。

価値がないと判断すれば、わずか数秒でひとつの世界を捨ててしまうようなヒロイン。なんと強いのだろう。
凡人の私には、その強さが恐ろしい。

そして、ヒロインが主人公を「つまらない」と評した言葉の意味に気付いてしまう。
そうだ。そうだろう。「あなたのような人」から見れば、どんな人間だってつまらない存在に成り下がってしまう。

でも、その中に微かな希望がある。

登校したばかりの時間は「まだ薄暗い」が、
ヒロインと話しているうちに主人公は「光が差す」瞬間を見る。
それはヒロインにとって新しい世界が始まる瞬間であり、二人にとっての別れの瞬間でもあり、あるいは、主人公が希望の道を歩き出す瞬間であるのかもしれない。
だからこそ、主人公は最後にヒロインを「見つける」。

物語全体に広がる圧倒的表現力。圧倒的世界観。
哲学的だとすら思う。

物語を読み終えて思う。
まさに【聖願心理】その人が、神様なんじゃないか、と。

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