第46話 ごめん

「史学部のレオとスピカだな」


帰り道。

覆面の集団に囲まれる。


「……そうだけど、あんた達は?」


こいつ等……軍人?

動きが綺麗すぎる。

退路も断たれて……


レオは困惑する。


「史学部はとりあえず皆殺しにする事になった。恨むなとは言わん」


「何故だよ!」


……ロマニア……?

まさか、勇者の死の真相……いや、それは無いだろう。

私はともかく、スピカは王女の親友。

手を出す訳が無い。


なら……外国?


「レオ……逃げよう?」


「無理だね。完全に退路を塞がれている。大丈夫、スピカは私が守るよ」


レオはスピカに微笑むと、主犯らしき男を見て、


「大人しく殺される趣味は無いんでね。抵抗させて貰う……死にたくなければ解放して欲しい」


「抵抗は認める。ただ、抵抗しない方が楽に逝けるがね」


……強い。

レオは、背筋が凍るのを感じた。


リーダーらしき男単独でも怪しいのに。

20……30?

引き連れている連中も、皆手練。

何でこんな首都近郊に、他国の兵が大量に……


キリ……


弓……!


堕天フォールダウン!!」


重力魔法、第陸階位シクス

出し惜しみは無し。


相手に驚いた様子は無い。

当然だ。

賤混者ハーフと戦う場合、事前情報に溺れてはいけない。

あらゆる可能性を考慮し……考慮していない事態にも柔軟に対処。


重力場により動きが制限、そして、飛び道具が使えない。


「唸れ疾風の刃、超位グラ風刃ワールウィンド!」


「燃やせ紅き牙、超位グラ炎牙ブレイズ!」


矢継ぎ早に魔法が飛来し、


「護れ、超位グラ風盾シールド!」

「護れ、超位グラ火盾シールド!」


スピカが打ち消す。


「ほう、防御、回復魔法に限っては侮れん……事前情報通りか」


男が、笑む。


「貫け、漆黒の牙……超位グラ重弾ミサイル!」


複数展開。

重力弾の雨が、降り注ぎ、


バチン


各種属性盾で弾かれる。

威力はそこまででもないので、第陸階位シクスの盾で防がれてしまう。


まずいな……強過ぎる。

死の文字がよぎる……


せめて……スピカだけでも……逃したい。

だが、それは難しい。

突破口を開いても、別働隊がいればアウトだ。


捕らえて人質にでもされるなら、降伏も有りだが。

明確に殺そうとしている。


くそう……


「そら……神槌ミョルニル


ゴオオオオオオウ!


風属性魔法、第玖階位ナインス

神の武器の名を冠した、暴虐の光がレオを襲い。


あ、死んだ。

レオの最高対抗魔法でも、どうしようもない。

と言うか、あっさり第玖階位ナインスを行使とか、おかしいだろう。

切り結んでも勝てるか怪しいのに……


ごめん……スピカ……


悔し涙が、目頭を熱くし、


「護れ、絶位エクス風盾シールド!」


スピカの張ったシールドが、男の放った魔法を打ち消す。

スピカ、第捌階位エイスが使えたの?!

レオが驚愕する。

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