第27話 囚われし亡霊

言葉に反し、資料は充実していた。

当時の生徒会長の考察等も残っており。


特に貴重なのは、勇者の直筆資料。

勇者、及び、その仲間は、この学園の卒業生、そして生徒会も務めていた。

まあ、封印書架ではなく、表の日誌等を見た方が良いかもしれない。

そんな気もしてくる。


封印書架の資料、そして外に置かれた当時の日誌。

平行して読み進め……ルシフは、情報を整理していく。


ルシフが集中して探しているのは、当時の人間関係。

恨みを買ったりしていないか、他人からの評価はどうだったか。

やや主観的な情報にはなってしまうものの、これはこれで貴重だ。


「なるほど……王貴血者アークとは、そもそも天使等、光の存在との賤混者ハーフという仮説……ふむふむ……」


リリーが熱心に資料を読み漁る。

それ、関係する資料なのか?

ルシフは訝しむ。


賤混者ハーフ王貴血者アークの婚姻は……」


何を調べているんだか。


「なあ、ルゥ。勇者リオン、どんな人物だったんだ?」


「彼は素晴らしい人物でした。文武両道、万人に愛され……私にも大変優しくして下さり……」


ルゥは目を細め、


「秘蹟の第捌階位エイスまでも使いこなす彼が、魔王に負けたとは……信じられなかったですし、当時は悲しみにくれました」


想いを馳せる様に言う。

やはり、勇者は強かったのか。


「俺達の研究テーマは、勇者は本当に魔王に負けたのか……その真実を暴きたい」


「リオン殿が、魔王と相討ち……確かに違和感はありましたね。あの人の優しい気配が消えたのは、魔王が倒れてから数日後……死因が相討ちと聞いて、強い違和感を覚えたのは事実です」


重要な証言。


「勇者がこの世を去ったのは確か……でも、死因は相討ちではない可能性がある、という事か」


何より分からないのが。

それを偽装する理由がない、という事だ。

相討ちの方が、不名誉だと思われる。

なら、敢えて不名誉な方の死因にする理由は……?


「貴方達が、真実を明かしてくれる事を望みます。私はこの部屋に囚われし亡霊──何か分かりましたら、私にも教えて下さい」


「ああ、約束するよ」


ルシフは、そっとルゥの頭を撫で、


「ん……懐かしい、感じです」


ルゥは、目を細めた。


--


「図書かーん!」


レオが叫び、


「レオ、静かに……」


スピカが、泣きそうな顔で言う。


2人は、図書館に来ていた。


「ハーレム法は関係ないと思うのだけど……」


スピカは、困った様に言う。


ハーレム法。

突如宣言された、法律。

複数の異性との婚姻を認める……


正に型破りの法律ではあった。


ロマニアは、伝統的に一夫一妻制。

それは王族まで徹底しており、他国の様に側室の概念も無かった。

当然、国民の恋愛観も、夫婦観も、一夫一妻制で。

浮気は最大の悪徳とされ。


とは言え、法律が出た背景も良く分かる。


魔王軍との戦いで生じた被害、人口は急減し。

特に、王族の数がたった2人に。

側室を持たなかった弊害……


多夫、または多妻を奨励、子供を増やす……

それは、順当な思考の結果導き出されるものだ。

他国では普通に行われているのだから。


通称、ハーレム法。

この法律が出来ても、一般市民の意識はなかなか改革されない。

多夫、または、多妻の夫婦は、まだ多くは無い。


スピカは、小説コーナーに目を向ける。


最近増えてきた、ハーレム物や、浮気物。

ハーレム物は、国から奨励金も出ると言う。

浮気物には出ない。


「頑張って探すぞ!」


「うん、頑張ろうか」


スピカは、思う。

他の人に頑張って貰おう、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る