第23話 研究テーマ

カラオケは楽しかった。

ルシフも、リリーも、初めての経験。

その後、ショッピングを楽しみ──ルシフが目に止めた商品をルピナスが全部買おうとして、ルシフに止められる一幕もあったが。


充実した放課後をすごし、解散。

新たな楽しみの1ページができ。


そして──


翌日。


「聞いて、勇者は相討ちなんてしていないのよ!」


「「「??!」」」


昨日の楽しい体験で、勇者討論の体験は上書きした筈なのに……


まさか、カラオケに行こうと言い出せなくて、言い出すのを待って……?


「じゃあ……今日はプールでも行くか?」


「じゃあって何よ!勇者に隠された真実を暴きましょう!」


レオの提案を、リリーが拒絶。

何……だと……


「言いたい事が有るのであれば聞こう。王女殿下からは、ただならぬ覚悟が見て取れる」


「流石、私の運命のライバル、シリウスね!」


「業腹ながら、そなたに勝てた事は無いのだが……」


非公式ではあるが、強者同士で試合が行われる事がある。

その結果、リリーが1位、シリウスが2位。

秘跡の第伍階位フィフスを操るリリーに、純粋な体捌きと剣技だけで肉薄……むしろシリウスの方を評価する声も多い。


こほん


リリーは、一同見回し、


「文化祭のテーマ……史学部は、勇者の死に隠された真実、それを発表します!」


どよ……


ディアナは青ざめ、スピカは絶句、レオはあんぐりと口を開け、ルピナスも目をぱちくり。


ルシフは、自分が言い出した事ながら、最早勇者と魔王の相討ちに疑いは無く、頬をかく。


「そんな事をすれば、王家から睨まれるであろうな。そなたが責任を取るんだな?」


「当然よ!みんなには迷惑はかけない。私の主導、全責任は私が取るわ!」


シリウスの低い声に、リリーが力強く頷く。


「分かりました。では、史学部の文化祭の展示は、勇者の真実で……ただし、ある程度固まる迄は、内容は部外秘でお願いします……皆さんも良いですか?」


「俺は構わない──姉弟子を妄信する訳ではないが、興味は有るからな」


「流石、私の婚約者フィアンセね!」


どよっ


一同、ざわめく。

ルシフは、こめかみを押さえ、


「その……なんだ。ともかく、文化祭に向けて頑張ろう」


後で、リリーとはじっくり話す必要が有るな。

ルシフは、心の中で大きく溜め息をついた。


--


「リリー、婚約者の件だが……」


解散後。

リリーに耳打ち、誘い出し、告げる。


「何、旦那様?」


「その……きみが王貴血者アークとは知らなかった……というか、明らかに俺が提示したハーレムの条件とは対極の存在だよな?」


王族、唯一の血縁者、第一王位継承者。

ルシフの村に嫁に来て良い存在ではない。


「ルシフ……愛が有れば、全て乗り越えられるわ。私は、あの時わかったの。私は貴方に嫁ぐ為に生まれてきたと」


リリーは、ルシフに近づき、


「私の事が、嫌い?」


「いや、そんな事は無い」


むしろ、魅力的だ。

リリーに運命を感じたのは、ルシフも一緒。


だが……


血の問題も大きい。


王貴血者アーク賤混者ハーフ……至高の血と、賤しき血……その反発は、想像すらできず……


……


あれ、秘跡使えるし、意外といけるんじゃね?


なんか、大丈夫な気がしてきた。


家の問題は後々考えるとして──


「すまない、リリー。今後も、俺の婚約者フィアンセでいてくれ──ただ、ハーレムの件は黙っておいて欲しい。女性に警戒されても困るし……それに、純粋に学園生活を楽しみたい、そう思う様になったからな」


「うん、分かったわ。改めて、よろしくね」


リリーが満面の笑顔を浮かべ。

ルシフも温かい気持ちになった。

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