第18話 史学部

「ま、待って下さい!私、史学部なんです!唯一の部員なんですよ!他の部には入れません!」


ディアナが涙目で主張する。


「会長、あまり一般生徒に迷惑をかけないで下さい……」


リブラが困った様に言う。


「生徒会メンバーも振り回さないで欲しいのですが……」


スピカがぽそりと言う。


「そうね……では、こうしましょう。新しい部活を作るのをやめ、全員史学部に入りましょう」


「ちょ?!」


ディアナが目を見開く。


「変な部を作られるよりは良いですね」


リブラが頷き、


「副会長?!」


ディアナが涙目でリブラを見る。


「……私は副会長ではなく書記なのだが」


副会長は、元生徒会副会長の3年生なのだが、幽霊生徒会員。

半数の生徒は、リブラを副会長と誤解している。


ちなみに、本物の副会長は、別に責任感がない訳では無い。

純粋に、リブラが優秀過ぎるのと、生徒会長であるリリーが他学年に強い対抗意識を持っている為、身を引いたのだ。


「それに、史学部は、伝統があるから廃部にはしていないが……規定人数に達していないのは気にしていたのだ。部員が増えるのであれば、受け入れたまえ」


「……うう……会長……」


ディアナが恨めしそうに言う。


「会長ではなく書記なのだがね?!」


残りの半数の生徒は、リブラを生徒会長と誤解している。

リリーの存在感は抜群なのだが、発表や司会、現地に赴いて調整……全てリブラが行う為だ。


はっ。


ディアナが気づき、


「皆さん、史学部に興味は無いですよね?」


「史学部……どんな部だ?でもまあ、別に拘らないぞ」


レオが小首を傾げる。


「お花……お世話できますか?」


「それは生徒会の活動として実施できるよう、調整しよう」


スピカの質問に、リブラが応じる。


「我は、特に拘らぬ。本を読むのは嫌いでは無い」


シリウスが頷き、


「王家の者は代々、伝統ある史学部に在籍する慣例……今、此処にそれを宣言するわ」


「勝手に慣例を新設するな」


リリーの宣言を、リブラが突っ込む。


「私は、ルシフ様と同じなら何処でも」


ルピナスが言い、


「最近、近代史で間違えたからな。歴史を深く学ぶのは悪くない」


ルシフがそう締めた。


「では先ずは……部活対抗戦の対策を練るわよ」


「出るんですか?!」


リリーの宣言に、ディアナが悲鳴を上げる。

非戦闘系の文化部は、通常参加しない。


「参加するのであれば、来週末迄に書面にて申請するように。後で書類は持ってくる」


リブラは、目を閉じ、溜め息をついた。


--


「何でこんな事に……」


ディアナは、降って湧いた環境変化に戸惑う。


場所を移動した。


史学部の部室──小さな図書館くらいのそれは、8人でもまだ少ない、そう感じさせる広さだった。

全盛期は文化系最大派閥だったのだが……あの一件以来……という分かりやすい理由もなく徐々に寂れ今に至る。


「あの、ディアナさん。大変ですよね……私達みたいな一般人が、凄い人達と急に接点が……でも、同じ一般人同士、仲良くして下さいね」


「はい、頑張りましょう」


ルピナスにディアナが笑みを返しつつ。

心の中で突っ込む。


貴方も普通じゃない。

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