第9話 計画されし子供

「……勝たされるのも凄いストレスなんですけど!」


レオがむくれて言う。


「ははは……」


ルシフが苦笑いする。


まあ、事実だ。

能力を偽り過ぎて、かなりやりにくい。


「あのね、賤混者ハーフが力を隠すのは良くありますから。ルシフさんが自己申告より高い能力出しても、そこまで気にされないですよ」


スピカがフォローする。


「ま、あたいら、単純に目をつけられたくないって個人的理由以外にも、理由があるしな。なあ、ルシフ、気づいてるんだろ?」


「……計画されし子供デザインチャイルドか」


ルシフが、忌々し気に吐き捨てる。


「私達が強い力を見せれば、純人間ピュアはその組み合わせを量産しようとするでしょうね」


リブラが、こめかみを押さえ、言う。


「あたいは──100人の検体のうち、無事生き残って出産したのが2人」


ぽつり。

レオが、語る。


「もう一人は理性が無く、暴走して、検体や研究者を皆殺し……検体の陰に隠れて生き残った私は、孤児院に引き取られ」


う……


嗚咽が聞こえる。


「血液サンプル等を提供する代わりにお金を貰っていたが、今はそれに頼らず、冒険者稼業で稼いでる。兼業学生って訳だ。まあ、似たような境遇の奴は多い、同情は当然要らねえ──要らねえって言ってんだろ、お前この話聞くの何回目だ?!」


ぼろぼろ涙を流すスピカに、レオが怒鳴る。


「だって、レオ悲し過ぎるよ!」


「あたいは今、別に不幸じゃねえ!もう良いだろ!」


いや、あんたも同じ境遇だろう。

うさぎが人間と交配する訳が無い。

ルシフが心の中でツッコミを入れる。


「まあ、伝えたかったのは。似たような境遇の仲間がいる事。賤混者ハーフは結構実力を隠すので、その事をあまり深刻に考える必要は無い事。その辺りです」


リブラがにこやかに言う。

ルシフは、何となく暖かい空気を感じた。


「あ、でも、放課後再戦してくれよ。本気を出せとは言わないけど、あれじゃ消化不良だ」


「……そうだな。確かに、実力を少し隠していたのは事実だ。期待にそえるか分からないが、微力を尽くそう」


ルシフは、微笑を浮かべ、そう応えた。


--


ルシフとレオの再戦は、後日として。

放課後は、学舎の案内、そして街に遊びに出る事になった。

ルシフには有り難い事だ。


どよっ


どよめきが沸き起こる。


人を割って歩いてくるのは──リリー?


「?!」


リブラが、声にならない声をあげる。


「生徒会……長?」


スピカが目を白黒させる。

生徒会長なのか?


「あれが、あの生徒会長なのか。何故隔離棟Zクラスの棟に……?」


シリウスが怪訝な声を出す。


「ルシフ!約束通り迎えに来たわよ!」


「リリー。すまん、クラスの奴が色々教えてくれる事になった。あんたの手を煩わせる事は無さそうだ」


「ど、どういう事よ??!」


リリーが叫ぶ。


「と言うか、生徒会長だったんだな。忙しいんじゃ無いのか?」


「なっ……そ、そうよ。生徒会長だから、転校生を案内する必要が有るのよ!」


「いや、生徒会長にそんな役割は有りませんが……」


リリーの主張を、リブラが否定する。

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