第6話 Zクラス

Zクラス。

一般の生徒はまず立ち入らない魔界。

まあ、ここでなら、ルシフの力もそう目立たないかも知れない。


魔力測定も、武術測定も、人間と賤混者ハーフが混じる事は無い。

年一度の統一武闘会デュエルだけは例外で、混じった状態で雌雄を決する。

昨年の1年、つまり今の2年は、それでも人間が優勝したが。

昨年の2年、つまり今の3年の本当のトップは、Zクラス所属者だ。

首席は人間から選ぶので、3年の首席は、Aクラス所属だ。


とはいえ、目立つ事には変わりが無い。

実質上の首席は、軍の精鋭、流星騎士団に内定した。

賤混者ハーフでは異例の待遇だ。

統一武闘会デュエルで実力を示す事は、出世への近道である事は間違いない。


「今日は転校生を紹介するぞ……入れ」


教官の指示で入室。

気付かれない程度に、見回す時にさっと力を視る。

ルシフにとって脅威となる者は……いない。

だが、魔力に優れた者、身体能力に優れた者……賤混者ハーフには、それなりの強さの者が見てとれた。


気になったのは……うさ耳の美女、猫耳の美女、エルフの美女……亜人もこっちなのか?

ハーレム候補では無いが、犬耳の偉丈夫、皮膚に樹が見えるインテリっぽい青年……いや、通常は賤混者ハーフとは、ゴブリンに襲われたりオークに襲われたりした村で、女性が浚われて……というパターンが多いんだが。

実際、クラスの半分くらいは、ハーフオーク、ハーフゴブリンだ。

兎とか、猫とか、女性を襲わんだろう……多分。


恐らく、想像は付く。

この国は、力に貪欲だ。


計画されし子供デザインチャイルド

強制的に魔物と交配させ、その子供を育ててたのだ。

非人道的だから、表だっては許されていない筈だが。

もしくは、そういった研究所から救出された子供なのかも知れない。


クラスの大半は、ルシフに見とれている。

実際、ルシフは美しい。

親は、ヴァンパイアかインキュバスか……そんな推測を立てた者もいる。


「ルシフと言います。宜しく御願いします」


ルシフは、その実力を完全に隠蔽し、友好的な笑みを向ける。


どきゅーん


クラスメートのハートを撃ち抜いた音すら聞こえた。


「ルシフは、こう見えて、深海の魔女アカネア様の弟子だ。お前達、いらん悪戯をしたら、命が無いかもしれんぞ」


「?!」


教官の脅しに、クラスがどよめく。

深海の魔女アカネア、村ではそれなりの知名度だったが、王都にまでその名が響き渡っていたのか……

これは不味いな。


ルシフは少し、不安を覚えた。


地元で嫁探しをしなかった理由……祖母が有名過ぎて、みんな畏まり、誰もルシフ自身をみてくれなかったのだ。

此処でも同じ状況になるのは……面白くない。


「祖母の弟子ではありますが、私は出来が良い弟子では有りません。みなさん、気軽に話しかけて下さい」


「やっぱり魔術は使えるのですか?」


ハーフトレント?の青年が手を挙げて尋ねる。


第壱階位ファーストまでなら」


おおおおお!


ルシフが答えると、クラスが沸く。


第壱階位ファーストでこの沸きようか……


ルシフは、警戒を強める。


これなら、村の方が、まだ優れた人が居たな。

期待していたわけでは無いが、少しがっかりとはした。

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